vol.27 ピアノ 小山実稚恵
ショパン・コンクール以来デビュー30年
4月と11月に協奏曲2曲ずつの記念公演
「まだこれしかやれていないという思いです」
1985年のショパン国際ピアノコンクールで4位入賞して以来、30年がたった。デビュー30周年記念として春と秋に、ショパンとラフマニノフのピアノ協奏曲を2曲ずつ演奏するコンサートを開く。
ショパンはもちろんコンクールゆかりの曲。ラフマニノフを選んだ理由は、「ピアノを弾けて良かったとつくづく感じる作曲家がラフマニノフです。たとえばベートーヴェンやシューベルトは音楽家として心酔しますが、演奏していてピアノという楽器の魅力を最も感じるのが、ラフマニノフなのです」と話す。
ロシアの後期ロマン派を代表するラフマニノフは、甘美でロマンティックな旋律で魅了する。また優れたピアニストとしても活躍した。
「4月に演奏するラフマニノフのピアノ協奏曲第3番は、高校・大学のころ、1日1回は聴かないと眠れないくらいでした。ラフマニノフの持っているゴージャスさが好きです。エンターテインメント性もあります。そして繊細。私にとってかけがえのない作曲家です」
豪華といえば、記念演奏会のオーケストラは、4月が大野和士指揮の東京都響、11月が広上淳一指揮のN響と、日本を代表するオーケストラと指揮者。実は20周年記念公演は広上の指揮、25周年は大野の指揮で行った。大野とは東京芸大の同級でもある。
「広上さんとも30年のおつきあいです。同世代の集いのような演奏会です。大野さんとの共演では〝秘めたる想い〟を吐露し、広上さんとの共演では〝未来への扉〟を開きたい」と決意を込める。
また、4月には30周年記念となる28枚目のCDがリリースされる予定。シューベルトの「即興曲集」を1月に録音した。
「シューベルトの優しさが本当に好きです。作品にはいたわりや慈しみなどすべてが入っていて心からの優しさを感じます。1音1音が純朴で夢があふれます。即興曲は、きれいだなと思うだけでなく、自分の気持ちと重なるのです。自分が本当にいいと思える作品を録音しました」
30年のキャリアの中で、最もショックを受けたのは東日本大震災。仙台で生まれ、盛岡で育っただけに 他人ごとではない。音楽の無力感も感じたが、震災以後、被災地での演奏を続けている。
「30年弾き続けても、まだこれしかやれていないという思いが強まるばかりです。いまは自分の思いを大切にするしかない、だから私はピアノを演奏しているんだ、と最近はつくづく思います」
Michie Koyama
仙台市出身。東京芸大卒。1982年、チャイコフスキー・コンクール3位、85年、ショパン・コンクール4位。両コンクールに入賞した唯一の日本人ピアニスト。2006年、オーチャードホールで12年間・24回リサイタル・シリーズ「小山実稚恵の世界」を開始。11年の東日本大震災以降、ライフワークとして被災地で演奏を続けている。今春、28枚目のCD「シューベルト:即興曲集」をリリース予定。05年度文化庁芸術祭音楽部門大賞。13年度東燃ゼネラル音楽賞洋楽部門本賞。
■デビュー30周年記念
4月18日(土) 14:00 サントリーホール
ショパン:ピアノ協奏曲第2番
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番、他
大野和士(指揮)、東京都交響楽団
11月5日(木) 19:00 サントリーホール
ショパン:ピアノ協奏曲第1番
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番
広上淳一(指揮)、NHK交響楽団
■問い合わせ:サントリーホールチケットセンター 電話0570-55-0017
■CD
シューベルト:即興曲集(写真)
(ソニー)SICC-10230
4月15日発売予定