vol.34 指揮 トーマス・ザンデルリンク
ザンデルリンクが佼成ウインドで「ロシアの夢物語」
「ダッタン人の踊り」「シェヘラザード」などを指揮
「まずオーケストラの音のイメージを削除します」
日本でもおなじみの指揮者。東京佼成ウインドオーケストラとは2011年1月に初共演。今回が3度目の登場になる。昨年には首席客演指揮者に就任し、ますます関係は深まっている。
「佼成ウインドは質のよいプレーヤーがそろっています。それにモチベーションも高い。私は佼成ウインドに招かれるまではウインドオーケストラを指揮したことはありませんでした。しかし、ヴェルディの『マクベス』などでバンダ(別働隊)がありますし、さまざまな経験をしていますから、佼成ウインドの指揮は決して難しいとは思いませんでした」
ウインドオーケストラで気をつけなければいけないのは音色だという。
「オーケストラでオリジナルの交響曲を指揮してきましたから、まずいったん、オーケストラの音のイメージを削除しなければいけません。そしてウインドオーケストラの音作りをしないと問題が生じてしまうことがあります」
12月に行われる演奏会は「ロシアの夢物語」と銘打たれている。ボロディン「ダッタン人の踊り」やリムスキー=コルサコフ「シェヘラザード」の編曲もの、そして“吹奏楽の神様”アルフレッド・リードが書いた吹奏楽オリジナルの「ロシアのクリスマス音楽」。
「お客さまに足を運んでもらう価値のある曲ばかりです。以前、R=コルサコフが吹奏楽のために書いたトロンボーン協奏曲を演奏しました。モーツァルトの『グラン・パルティータ』も管楽器のための作品です。ストラヴィンスキーにも興味深い作品があります。今後は、吹奏楽のために書かれたオリジナルの作品も指揮していきたい」
父親のクルト・ザンデルリンクはナチスから逃れ、旧ソ連に亡命。トーマスもソ連で生まれ、サンクトペテルブルクで育った。レニングラード音楽院で教育を受け、その後、東ドイツに。24歳でハレ州立歌劇場音楽監督に抜擢された。ショスタコーヴィチの交響曲第13番と第14番のベルリン初演を行ってもいる。一昨年、ショスタコーヴィチの最後のオーケストラ作品「ミケランジェロ組曲」を録音した。
「ショスタコーヴィチはとても複雑な人でした。簡単にエピソードは話せません。大人しいが内面の強さをもっていました」
しかし、その後、ソ連や東ドイツはなくなった。トーマスは激動の20世紀のまっただ中を生きてきた。
「私の家はロンドンにありますが、ドイツにもロシアにも指揮をしに行きます。激動でしたが、いい方向に行きました。変化は必要不可欠だったのです」
Thomas Sanderling
1942年生まれ。父のクルト・ザンデルリンクがサンクトペテルブルク・フィルの指揮者であったため、ザンデルリンク家の長男としてサンクトペテルブルクで育つ。レニングラード音楽院、東ベルリン音楽院で学ぶ。24歳でハレ州立歌劇場音楽監督。ショスタコーヴィチの交響曲第13番と第14番をベルリンで初演。世界各地で指揮し、日本では1992年から2000年まで、大阪シンフォニカー(現大阪交響楽団)音楽監督及び首席指揮者。14年より東京佼成ウインドオーケストラの首席客演指揮者。
東京佼成ウインドオーケストラ
第126回定期演奏会
ロシアの夢物語
12月5日(土) 14:00 東京芸術劇場
指揮:トーマス・ザンデルリンク
ボロディン/ハインズレー編:歌劇「イーゴリ公」から「ダッタン人の踊り」
リード:ロシアのクリスマス音楽
R=コルサコフ/稲垣卓三編:交響組曲:「シェヘラザード」
■問い合わせ:事務局 電話 0120-692-556