おすすめアーティスト vol.53 指揮 園田隆一郎

vol.53 指揮 園田隆一郎

©Fabio Parenzn

久々に登場した本格的なイタリア・オペラ指揮者
6月に日生劇場で「ラ・ボエーム」を日本語上演
「繊細で美しい部分を大事にして演奏したい」

 久々に日本のオペラ界に登場した本格的イタリア・オペラ指揮者の園田隆一郎。近年のイタリア・オペラ公演の中心に常に存在している。オペラとの出会いは大学からだという。
 「東京芸大の『藝祭』で『コジ・ファン・トゥッテ』の副指揮を経験し、オペラの世界に魅了されました。指揮のレッスンとともに、朝から晩まで声楽科の同級生のレッスンに伴奏ピアニストとして同行、さまざまな先生の歌のテクニックやコツを聴き、作品も知りました」
 在学中の本場イタリアでの経験がオペラ指揮者への道を決定付けた。
 「4年の夏休みにイタリアのキジアーナで行われた指揮者のジャンルイジ・ジェルメッティのマスタークラスを受講、楽譜を大事にする演奏姿勢などに感銘を受けました。その後、彼が音楽監督のローマ歌劇場へ勉強に行き、最終的には公演アシスタントの形で雇っていただきました。自分に足りないものと、これまでに学んだことで良いこと、言葉の重要性などを知る貴重な機会でした」
 2006年の藤原歌劇団「ラ・ボエーム」の成功、同年夏、「ロッシーニ・オペラ・フェスティバル(ROF)」の若手の登竜門であるアカデミー公演「ランスへの旅」を指揮、一気に日本でもその名が知られる。
 「ロッシーニは、大学時代に有志で『チェネレントラ』を上演してから自分にとっては大事な作曲家になり、ROFの存在も知っていました。そこの若い指揮者を使った『ランスへの旅』に出るのは夢でした。しかし、コネクションもないので音楽祭事務局に履歴書と指揮したDVDを直接送ったのですが、その後、今年の『ランスへの旅』の指揮をお願いします、という電話をもらいました。憧れのマエストロ、アルベルト・ゼッダの指導も受けるようになり、その後の公演も任せてもらうようになり、人生の師となりました」
 「ラ・ボエーム」は、節目ごとに指揮してきた作品だという。
 「大学院の修了演奏会、プロデビューの藤原歌劇団の公演で指揮しました。今回は、楽譜を大事にして丁寧に音楽を作っていきたい。この作品は繊細な部分も多く。第4幕でミミが死んでいくところの、弱いけれどずっと長く弧を描くようなメロディー・ラインは、後の作品にはない美しい音楽で、そういったところを大事にしたいです」
 今回は、中高生対象の無料公演「ニッセイ名作シリーズ」は東京と地方を合わせて12公演行われる。初めてオペラを見る人たちに、母国語を音楽に乗せてダイレクトに感じてもらうという狙いから、全公演日本語上演となる。
 「歌手の宮本益光さんに訳詞を作ってもらいます。宮本さんは、訳詞をテーマとして幾つかオペラの翻訳を手がけられていますが、もとのイタリア語のラインや音の明るさを失わないように訳詞され、素晴らしいものです。しかも、キャストは『なぜ、このメンバーでイタリア語でやらないのか』というほどイタリア音楽のスタイルを理解している人たちです。そういう人たちでこそ日本語上演をやりたいのです」

Ryuichiro Sonoda

東京芸術大学指揮科、同大学院を修了。遠藤雅古、佐藤功太郎、ジェイムズ・ロックハートらに師事。その後、イタリア、シエナのキジアーナ音楽院で、ジャンルイジ・ジェルメッティに師事、そのアシスタントとして、ローマ歌劇場やマドリード王立歌劇場などで研鑽を積む。また、ペーザロのロッシーニ・オペラ・フェステイバル(ROF)でアルベルト・ゼッダに師事。2006年、シエナのキジアーナ夏季音楽週間で「トスカ」を指揮してデビュー、翌07年、藤原歌劇団「ラ・ボエーム」で日本デビュー。同年夏にはROFで「ランスへの旅」、カターニアのベッリーニ大劇場管を指揮。その後、国内外でオペラを指揮、15年4月より藤沢市民オペラ芸術監督。

ここで聴く

NISSAY OPERA 2017
プッチーニ:歌劇「ラ・ボエーム」

日本語上演(訳詞・字幕:宮本益光)
6月18日(日)、24日(土) 各日13:30開演
日生劇場
指揮:園田隆一郎  演出:伊香修吾
砂川涼子/北原瑠美(ミミ)、宮里直樹/樋口達哉(ロドルフォ)、大山大輔/桝貴志(マルチェッロ)、池内響/近藤圭(ショナール)、デニス・ビシュニャ/三戸大久(コッリーネ)、柴田紗貴子/高橋絵理(ムゼッタ)、他
■問い合わせ:日生劇場 電話03-3503-3111(10:00~18:00)
■公式ホームページ:www.nissaytheatre.or.jp

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