おすすめアーティスト vol.56 ラトヴィア放送合唱団・指揮者 カスパルス・プトニンシュ

vol.56 ラトヴィア放送合唱団・指揮者 カスパルス・プトニンシュ

©Jānis Deinats

深みのあるハーモニーが世界で注目される合唱団
来日公演でラフマニノフの大作「徹夜祷」を披露
「『徹夜祷』は驚くべき芸術的想像力と技術力の賜物」

 バルト3国のひとつラトヴィアは、指揮のヤンソンスやネルソンス、ヴァイオリンのクレーメル、チェロのマイスキー、そして、ガランチャ、オポライス、シリンスなど、素晴らしい音楽家を輩出していることで知られている。
 「優れたラトヴィア出身の音楽家たちが活躍している理由を述べるのは難しいですが、音楽教育はとても良いと思います。ラトヴィアでは音楽、とりわけ歌はとても人気があると思いますが、北欧のほとんどの国々でも同じことが言えると思います」
 歌に人気のある国で生まれたラトヴィア放送合唱団は、今回、日本でも共演する、自作の演奏に厳しいハインツ・ホリガーもその素晴らしさを絶賛する数少ない団体の一つで、世界的な名声を得ている。
 「我々の合唱団は優れた精神的なコミュニケーション能力を持っていると思います。団員それぞれが自分の声の色合いを失わずに、色合いの違った他のメンバーとハーモニーを作ることができるという特殊な能力を発達させてきました。そして、自分たちとは異なるスタイルにも柔軟で、個々のメンバーが適切な音楽的知識と鋭い耳を持っています。それに音楽への情熱を持っています」

©Matiss Markovskis

 今回の日本公演のプログラムもラフマニノフの大作「徹夜祷」などの難曲が並ぶ。
 「今回取り上げる3つの作品は、どれも美しく響き、率直で重要なメッセージを含んでいる曲だと思います。メインとなる『徹夜祷』は、ロシア正教会の公式の典礼の音楽ですが、本物の美しさと大曲たる充実した内容、それに深さを備えた真に偉大な傑作で、ラフマニノフの驚くべき芸術的想像力と技術力の賜物です。また、この作品はロシアの伝統的な音楽の香りを色濃く持ちながらも、その音楽は、現代に生きている全人類に働きかけるメッセージを持っています。この国が歩んだ歴史から、ほとんどのラトヴィア人はロシア語を話し、文化にも通じています。正教会には属していませんが、この作品の神髄を表現することができると感じています」
 現代作品にも積極的に取り組み数多くの録音を残しているほか、今回の来日ではグラスやペルトなどを取り上げ、魅力あるレパートリーの拡大を行っているのも、この合唱団の特徴といえる。
 「現代曲を演奏することで、今日の世界と対話することができます。過去の音楽は大きな価値があり、私たちに大切なことを語りかけてくれる力を持っていますが、それを消費するばかりだと、自分たちを精神的な博物館のようなものに閉じ込めてしまうことになるでしょう。今日は素晴らしい価値と深さ、美しさを持った現代曲が数多く存在します。それらは簡単に理解することができないかもしれませんが、我々がその世界に入るためには少しの忍耐と決意を持って、理解しようと働きかける必要があります。グラスやペルトの作品は我々の時代の文化的な宝物で、今回、演奏できることを大変嬉しく思っています」

Kaspars Putninš

1966年、生まれ。92年よりラトヴィア放送合唱団の指揮者を務める。94年、ラトヴィア放送合唱団のソリストからなるラトヴィア放送室内シンガーズを創設。客演指揮者としてヨーロッパの一流合唱団に定期的に招かれ、 BBCシンガーズ、RIAS室内合唱団、ベルリン放送合唱団、NDR室内合唱団、オランダ室内合唱団、コレギウム・ヴォカーレ・ゲント、フランダース放送合唱団等を指揮。エストニア・フィルハーモニー室内合唱団の芸術監督兼首席指揮者も務める。

ここで聴く

すみだトリフォニーホール開館20周年
5月22日(月)19:00 すみだトリフォニーホール
ラトヴィア放送合唱団
カスパルス・プトニンシュ(指揮)
ラフマニノフ:徹夜祷(晩祷)
グラス:〈コヤニスカッティ〉より「ヴェセルズ」
ベルト:スンマ
■問い合わせ:トリフォニーホールチケットセンター 電話03-5608-1212

コンポージアム2017 ハインツ・ホリガーの音楽
5月25日(木)19:00 東京オペラシティ
ハインツ・ホリガー(指揮)
フェリックス・レングリ(フルート)
ラトヴィア放送合唱団(合唱指揮:カスパルス・プトニンシュ)
アンサンブル・ノマド
ホリガー:「スカルダネッリ・ツィクルス」
■問い合わせ:東京オペラシティチケットセンター 電話03-5353-9999

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