vol.63 ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団首席指揮者 ダニエレ・ガッティ

vol.63 ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団首席指揮者 ダニエレ・ガッティ

文=安田真子◎音楽ライター(在オランダ)

©Marco Borggreve

手兵ロイヤル・コンセルトヘボウ管を率い来日
ブラームスの交響曲1番やマーラー4番など演奏
「このオーケストラは弱点のない、完璧な楽器」

 世界屈指の実力・人気を誇るオランダ・アムステルダムのロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団が、7代目の首席指揮者としてダニエレ・ガッティを迎えてから初の日本ツアーを行う。ガッティは、同団の客演指揮者として13年前から定期的に共演を重ねてきたが、首席としては2年目を迎えたところだ。
 「当然ながら相応の責任がありますが、音楽面だけではなく組織としての機能も素晴らしいので、音楽に集中できて、とても充実しています」
 同団については、「弱点のない、完璧な楽器」だと語る。
 「このホールで育まれてきた音色に加え、各セクションのバランスが完璧です。豊かな表現力や、演奏の性質を瞬時に変える柔軟さもある。また、伝統をベースにしながらも常に革新的な演奏を望む音楽家が集まっている。だからこそ、よく知られている曲にも新しい光を当て、聴衆にも魅力的な音楽を目指していけるのです」
 日本ツアーでは2種のプログラムを携える。ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲とブラームスの交響曲第1番という「極めて釣り合いのとれた」組み合わせと、ハイドンのチェロ協奏曲第1番とマーラーの交響曲第4番だ。ベートーヴェンで独奏を務める名手フランク・ペーター・ツィンマーマンは、自身と 「極めて近い音楽観を持つ共演相手」だという。
 1989年、初めて指揮をしたマーラーの交響曲が第4番だった。「生涯忘れられない思い出がある」と懐かしそうに目を細めた。

©Anne Doctor

 「15歳の頃からマーラーを聴いていましたし、周到に準備していたにも関わらず、初合わせのリハーサルで全くの制御不能に陥ったのです。休憩中、楽屋で一瞬パニックになりましたが、『対処しなければいけない。舞台に戻って続けよう』と自分に言い聞かせ、後半に臨みました。すると、ほとんど1小節ずつでしたが、完全にコントロールできるようになったのです。まるで頬をぴしゃりと打たれたような経験でした」
 マーラーとの縁は今後も続いていく。ガッティは、同団のことを「マーラーのオーケストラ」だと語る。
 「マーラーが生涯で最も幸せだった時期にこの楽団を指揮し、心の平穏や幸福を共有していたであろうことは注目に値します。皆さんにも、このオーケストラのすぐ側にいた作曲家マーラーを意識して聴いてもらえればと思います」
 今後4、5年にわたるマーラー・ツィクルスを見据えており、交響曲全集の録音・録画も新たに行う予定だ。

Daniele Gatti

1961年、イタリア・ミラノ生まれ。ミラノ音楽院でピアノ、ヴァイオリン、作曲、指揮を学ぶ。
27歳でミラノ・スカラ座にデビュー。1992年、サンタ・チェチーリア国立音楽院管弦楽団、97年、ボローニャ市立劇場の音楽監督を務める。96年、ロイヤル・フィル首席指揮者。2008年、フランス国立管弦楽団音楽監督。09年、チューリッヒ歌劇場首席指揮者。16年秋のシーズンからロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団首席指揮者。

ここで聴く

ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
指揮:ダニエレ・ガッティ

11月20日(月)19:00 A
11月21日(火)19:00 B
サントリーホール
11月23日(木・祝)18:30 A
長崎ブリックホール
11月24日(金)  19:00 A
大阪フェスティバルホール
A ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲(ヴァイオリン:フランク・ペーター・ツィンマーマン)
 ブラームス:交響曲第1番
B ハイドン:チェロ協奏曲第1番(チェロ:タチアナ・ヴァシリエヴァ)
 マーラー:交響曲第4番(ソプラノ: ユリア・クライター)
■問い合わせ:カジモト・イープラス 電話 0570-06-9960

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