vol.69 ヴァイオリン ザハール・ブロン
70歳記念で弟子達が名教師を祝うコンサート
ワディム・レーピン、樫本大進、服部百音らが出演
「大切なのは見つけたつぼみを開花させること」
今年の「トランス=シベリア芸術祭 in Japan 2018」は、ロシア出身の名教師ザハール・ブロンの70歳記念のコンサートを行う。
ブロンの教師としての才能は、弟子の活躍を見れば一目瞭然。コンサートに出演する、ワディム・レーピンは17歳のときエリザベート国際音楽コンクールで優勝、ロン=ティボー国際音楽コンクールで優勝した樫本大進はベルリン・フィルのコンサートマスター、服部百音はヴィエニャフスキ国際ヴァイオリン・コンクールのジュニア部門で最年少1位、パロマ・ソーはノヴォシビルスク・ヴァイオリンコンクールで優勝。ほかにマキシム・ヴェンゲーロフ、庄司紗矢香、神尾真由子ら驚くほどの人材を生み出した。
「優秀な弟子が多すぎると言わないでください。育てる秘訣は秘密です。というのは冗談です」と笑いながら話を続けた。
「私たちの仕事に必要とされることが2つあります。1つは才能があるかないか。2つ目は、才能が本物であれば稀有な才能であるかどうかです。最近は10、11歳ぐらいまでを対象にしたコンクールがありますが、才能のつぼみを見つけることができます。しかし、それは年を経るに従って減り、17歳以上のコンクールではつぼみがなくなっています。大切なのは見つけたつぼみを開花させることです。それが私たち教師のなすべきことと考えています」
才能は子供をレッスンしてみるとよく分かるという。レーピンがブロンのもとに来たのは5歳のとき。樫本は10歳で師事した。
「レーピンの演奏に何かユニークさを感じたことを覚えています。樫本もそうでした。才能ある子供を教えていると、こちらも新しいアイデアが次々とわいてきます。どのようなプロフェッショナリズムを秘めているかが見えてきます。私が誇りに思うのは、弟子の数ではなく、育ったアーティストがみな個性、顔を持ったアーティストであることなのです」
コンクールに入賞した弟子だけでも200人はいるという。日本でセミナーや音楽祭を開くなど日本人の弟子も多い。
「ベストな弟子は誰ですか、とよく聞かれるのですが、まだこれからです、と答えています。素晴らしいテクニックで弾けたとしても、さらに追求しなければだめです。母国語を操るようにヴァイオリンが弾けるように教え込まなければいけません。教師の仕事にリミットはありません」
4人の弟子と先生が一緒に演奏する70歳記念のコンサートは、めったにない貴重な機会だ。
Zakhar Bron
1947年、カザフスタン・ウラリスクに生まれ、オデッサの音楽学校に学び、1966~71年モスクワ音楽院でイーゴリ・オイストラフに師事した。同音楽院でオイストラフ教授の助手を務めた後、ノヴォシビルスク音楽院に移る。71年のエリザベート王妃国際音楽コンクールに入賞。89年リューベック音楽院の教授。現在はザハール・ブロン・アカデミーを主宰。門下からはワディム・レーピン、マキシム・ヴェンゲーロフ、樫本大進、庄司紗矢香、神尾真由子らを輩出。05年からは「茨城国際音楽アカデミーinかさま」で指導している。ロシア功労芸術家。
トランス=シベリア芸術祭 in Japan 2018
スーパー☆ヴァイオリニスト夢の饗宴
6月29日(金) 19:00
Bunkamuraオーチャードホール(東京)
サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソ〈ワディム・レーピン〉/
ラヴェル:ツィガーヌ〈ザハール・ブロン〉/
グノー(ヴィエニャフスキ):ファウスト・ファンタジー〈服部百音〉/
バッハ:2つのヴァイオリンのための協奏曲〈ブロン、レーピン〉/
ショスタコーヴィチ:2つのヴァイオリンのための5つの小品〈ブロン、他〉/
マスネ:タイスの瞑想曲〈ブロン〉/
ヴィヴァルディ:3つのヴァイオリンのための協奏曲〈ブロン、レーピン、樫本大進〉、他
■問い合わせ:電話 03-3477-3244