vol.75 編曲・オルガン 鈴木優人
「『きよしこの夜』~BCJのクリスマス」を発売
著名なクリスマス・キャロルをアカペラに編曲
「満を持していいタイミングで録音できました」
アカペラ(無伴奏の合唱)で歌われる「きよしこの夜」や「まきびとひつじを」などのなんと荘厳なこと。キリスト教徒でなくとも一瞬にして敬虔なクリスマスの雰囲気にひたれる。
アルバムにはよく知られたクリスマス・キャロルが12曲(ソロと三重唱が1曲ずつ)とフランスの作曲家、ダカンのオルガン・ソロによるノエルが7曲収められている。収録されている合唱曲の編曲と、オルガンの演奏を受け持った。
「バッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)がクリスマスにサントリーホールで公演している『メサイア』のアンコールで1曲ずつ披露してきました。『メサイア』を3時間聴いたごほうびみたいなもので恒例となっていました。バロック的なスタイルではつまらないかな、とアカペラで編曲しました。もう終演、とお客様が席を立つ頃に歌って驚かせたこともあります。ハーモニー的にも意表を突くような新しいテイストを、とジャズ的なハーモニーを入れた曲もあります」
「アカペラはグリークラブなどイギリスのアマチュアの伝統でもあります。日本にもハモリサークルがありますよね。アカペラの歌い方は、バッハとは異なる声の張り方が求められます。2013年から5年間、クリスマスコンサートで歌ってきました。いつかCDを出したい、と話していたのですが、今回ついに実現しました。今まで合唱しかいない現場はなかったので、録音現場は緊張感とともにみな生き生きとしていました。満を持して、いいタイミングでまとめて録音できました」
クリスマス・キャロルは当然、日本語でも歌われてきた。飼い葉桶の中で眠るイエスを称える「まぶえのかたえに」の3番の歌詞、メンデルスゾーンのカンタータの旋律が使われている「あめにはさかえ」の1番の歌詞は日本語で歌われている。自身はプロテスタントのクリスチャン。父親はBCJを創設した鈴木雅明。
「子供のころの教会のクリスマスの記憶はあります。キリスト教徒的にはクリスマスは死と結びついているのです。キリストは罪を背負った人間を救うためにこの世に来てくれたのです。キャロルにも暗い部分があります。しかし、アレンジされた曲ですし、特に宗教性をアピールしたアルバムではなく、日本語の歌詞もあり、親しみやすいアルバムになったと思います。BCJが今みなさんとシェアしたい曲を集めましたのでぜひお聴き下さい」
Masato Suzuki
1981年、オランダ生まれ。東京藝術大学作曲科及び同大学院古楽科修了。ハーグ王立音楽院修士課程オルガン科を首席で、同音楽院即興演奏科を栄誉賞付きで日本人として初めて修了。アムステルダム音楽院チェンバロ科にも学ぶ。2018年9月よりバッハ・コレギウム・ジャパン首席指揮者に就任。音楽監督を務めるアンサンブル・ジェネシスでは、オリジナル楽器でバロックから現代音楽まで意欲的なプログラムを展開する。作曲家としても数々の委嘱を受ける。調布国際音楽祭エグゼクティブ・プロデューサー。
■CD
「きよしこの夜/ BCJ のクリスマス」
バッハ・コレギウム・ジャパン(合唱とソロ)
鈴木雅明(指揮)、鈴木優人(編曲、オルガン)
「ことばは肉となった」(ソプラノ・ソロ)
ノエル第1番~ルイ=クロード・ダカン:オルガンのための新ノエル集から(オルガン・ソロ)
「いけるものすべて」
ノエル第2番
「まぶねのかたえに」(3番歌詞日本語)
ノエル第3番
「きよしこの夜」
「もろびと声あげ」
「まきびとひつじを」
「あめにはさかえ」
「神の御子は今宵も」、他
(キングインターナショナル)KKC-4148
(SACDハイブリッド)