おすすめアーティスト vol.87 女優 佐久間良子

vol.87 女優 佐久間良子

「ストゥーパ~新卒塔婆小町~」で小野小町を演じる
和洋の様式を取り入れたイノベーション・オペラ
「人生にはいい時も悪い時もあって繰り返されます」

 「イノベーション(革新的な)・オペラ」と銘打った「ストゥーパ~新卒塔婆小町~」で小野小町を演じる。東京・豊島区に11月に誕生する「東京建物 Brillia HALL(ブリリアホール)」のこけら落とし公演。ストゥーパとはサンスクリット語で卒塔婆のこと。指揮者の西本智実が能の「卒塔婆小町」を題材に脚色、演出を手がけた和洋の様式を取り入れた舞台。
 4年前、京都の 泉涌せんにゅう寺で「泉涌寺音舞台」というイベントで朗読をした際に、オーケストラを指揮していた西本と知り合った。
 「本堂の前に舞台を作りました。夕陽がだんだん落ちてきて、鳥肌が立つぐらいすばらしかったのです。それ以来、西本さんが声をかけてくださいました。『ストゥーパ』のお話を最初にうかがったときは、西本さんの頭の中にある大きな構想がよく分からず戸惑いました」
 能の「卒塔婆小町」は、観阿弥の作品。みすぼらしい老女が卒塔婆に腰掛けている。通りかかった高野山の僧が見とがめ説教をするが、逆にやり込められてしまう。驚く僧が老婆に名を聞くと、小野小町のなれの果てだという。西本はこの話をオペラ化、2017年に初演した。今回で4回目の公演になる。
 「西本さんの創作が素晴らしい。演劇のストレートプレーばかりでオペラは初めてでした。100人の合唱団が入り、音楽が心地よいのです。オーケストラはステージの後ろにいるので西本さんからの合図は受け取れません。せりふのタイミングは音楽をよく聴かないといけません」

©塩澤秀樹

 平安時代に生きた小野小町の詳しい人物像は分かっていないが、残された伝承が「深草少将の百夜ももよ通い」。小町に思い焦がれる少将を諦めさせようと、「私のもとに百夜通ったらあなたのものに」という。99夜通った夜に雪が降り凍死してしまう。
 絶世の美女と言われた小町が、いまでは老婆となっている。小町の話を聞いていた従僧には深草少将が宿っており、小町を責める。
 「今回は少将が美しい女形の中村扇雀さんですから、どのように歌舞伎と融合するのかが楽しみです。小町は少将を死なせてしまった罪の深さをものすごく感じています。小町が持っている人間の業を感じます。人生にはいい時と悪い時があって繰り返されます。輪廻りんね回転ですね。古典ですが、ただ古いだけではありません。外国の方にも観ていただきたいですね」と話す。
 今回の公演には、豊島区にある母校、川村学園の合唱団が参加する。

Yoshiko Sakuma

東京都出身。東映第4期ニューフェース。映画「故郷は緑なりき」でデビュー。「五番町夕霧楼」でサンケイ新聞社シルバースター主演女優賞などを、「湖の琴」でNHK主演女優賞を受賞。130本以上の映画に出演。NHK大河ドラマ「おんな太閤記」では、ねね役で女性初となる主演を務め平均視聴率30%超えで視聴者を魅了した。1982年松尾芸能賞受賞。三島由紀夫原作「春の雪」は初舞台にして4カ月のロングランとなった。「唐人お吉」で文部省芸術祭賞と菊田一夫演劇大賞。2011年文化庁長官賞。2012年旭日小綬章。

ここで聴く
INNOVATION OPERA
ストゥーパ ~新卒塔婆小町~

11月16日(土)16:00、17日(日)14:00

東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)
演出・指揮:西本智実
作曲:織田英子
小野小町:佐久間良子
従僧/深草少将:中村扇雀
僧:杜けあき

■問い合わせ:としまチケットセンター
       電話 03-5391-0516(10月29日まで)
       電話 0570-056-777(11月1日より)
https://toshima-theatre.jp/ticket

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