vol.101 ピアノ 反田恭平
東京芸術劇場30周年記念公演に登場
読売日本交響楽団とラヴェルの「左手」を
「ラヴェル本来のよさがあると思います」
取材はウィーンから帰国したその日にオンラインで行った。この秋、ウィーン・デビューを代役で果たしてきた。10月25日、音楽監督の佐渡裕が指揮するトーンキュンストラー管弦楽団と共演、ウィーン楽友協会でラフマニノフのピアノ協奏曲第2番を演奏した。
「初めてウィーンへ行きました。やっぱり楽友協会は特別。録音や映像でしか聴いていなかったあの音たちとは全く違った景色が、ステージから見えました。釣り天井と床下が空洞になっているということもあって、人生で初めて感じる響きでした。オーケストラの皆さんもとても暖かく迎え入れて下さり、決して忘れられないウィーン・デビューとなりました。でも、大変な時期でした」
大変なのはコロナ禍だけではない。11月2日夜、銃撃テロ事件が起き、市民が犠牲になった。幸いにもレコーディングは実施され、来年2月に発売予定のCDのためにプロコフィエフ「ピアノ協奏曲第3番」を録音した。反田が立ち上げたレーベルから初の、コンチェルトCDとなる。佐渡とは2017年、19年と全国ツアーを重ねているので気心はしれている。
「安心感がありました。指揮を見なくても方向性が分かります。ウィーンでは少し緊張していましたが、ブラボーとスタンディグオーベーションで、ウィーンの聴衆に迎え入れていただけたことが大きな励みになりました」
2週間の待機期間を過ごせば、12月4日(金)には東京芸術劇場30周年記念で、読売日本交響楽団との演奏会。
今回はラヴェルの「左手のための協奏曲」を演奏する。第1次世界大戦で右手を失ったピアニスト、ヴィトゲンシュタインのために1930年に作曲された。
「読響はバリバリ弾けるメンバーがそろっています。この曲は、いろいろな方から似合いそうと以前から言われてきましたが、今回初トライです。ラヴェル本来の魅力がこの左手に詰まっているのではないかと思います。僕は、もともと左利きだったということもあり、左手も器用に動かせます。読響さんの深く熱い音圧にも負けることはないと思います。ラヴェルの協奏曲は両手の方が有名ですが、こちらの協奏曲もラヴェルの色彩感がギュッと詰まっています。今からとても楽しみにしています。とはいえ、20分間右手の位置をどうしようか… なんて迷っています(笑)」
Kyohei Sorita
2016年デビューリサイタルを機にソリストとして活動を展開し、わずか3年間でベルリン・ドイツ響、マリンスキー劇場管、ワルシャワ・フィルをはじめとする国内外のオーケストラと100回以上共演を重ねている。18年からはMLMナショナル管のプロデュース、19年にはレーベルを立ち上げた。今年のコロナ禍ではいち早く有料のストリーミング配信を行うなど、クラシック音楽の普及にも力を入れている。1994年生まれ。現在、F.ショパン国立音楽大学(旧ワルシャワ音楽院)研究科在籍。
東京芸術劇場30周年記念公演
読売日本交響楽団演奏会
12月4日 (金) 19:00 東京芸術劇場コンサートホール
指揮:マキシム・パスカル
ピアノ:反田恭平
望月京:むすび
※東京芸術劇場30周年記念新作委嘱作品(望月京:「待ちわびて」)は、
作曲者の都合により演奏することが不可能となった。代わって「むすび」を演奏する。
ラヴェル:左手のためのピアノ協奏曲
ドビュッシー:海
ラヴェル:ラ・ヴァルス
■問い合わせ:東京芸術劇場ボックスオフィス ☎0570-010-296