交響曲・管弦楽曲・協奏曲
岡本稔◎音楽評論家
ジョン・ウィリアムズ・セレブレーション
●ウィリアムズ:「オリンピック・ファンファーレとテーマ」、「未知との遭遇」抜粋、「スター・ウォーズ」から“帝国のマーチ”、“ヨーダのテーマ”、“王座の間とエンドタイトル”、「ジョーズ」から、他
グスターヴォ・ドゥダメル(指揮)
ロサンゼルス・フィルハーモニック
(ユニバーサル)UCCG-1836/7 3780円
録音:2019年1月
敬愛するウィリアムズの映画音楽を慈しむように演奏
2019年1月、ウォルト・ディズニー・コンサートホールにおけるロサンゼルス・フィル創立100周年を記念する演奏会のひとつ。本拠がハリウッドに近いこのオーケストラは映画音楽の演奏には長い伝統を持つ。音楽監督のドゥダメルは以前よりウィリアムズの音楽を敬愛していたという。彼とそのスーパー・オーケストラは、マーラーに臨むのと同じ姿勢で自国を代表する作曲家の作品を慈しむように演奏。良い意味でのエンターテインメント性にも富む。
シューベルト:交響曲第9番「ザ・グレート」
●ウェーバー:歌劇「オベロン」序曲
●グルック:歌劇「オーリードのイフェジェニー」序曲
ヘルマン・アーベントロート(指揮)
ベルリン放送交響楽団(シューベルト、録音:1944年)
バイエルン州立管弦楽団(ウェーバー、録音:1956年)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(グルック、録音:1944年)
(アルトゥス)TALT-055 オープン価格
東独の個性を示すベルリン放送響との最晩年の録音
戦後の東独で活躍したヘルマン・アーベントロート(1883~1956)のベルリン放送響首席時代の最晩年の録音。1956年収録のシューベルトにはこの指揮者の特徴が顕著に示されている。ストレートな表現ながら含蓄にも富み、独自のスケール感を併せ持つ。オーケストラはもっとも良い意味での東独的な個性を示す。ウェーバーの「オベロン」序曲、グルックの「オーリードのイフィジェニー」序曲を併録。
室内楽・器楽
伊熊よし子◎音楽ジャーナリスト
バッハ:ヴァイオリン・ソナタ集
●バッハ:ヴァイオリン・ソナタ第3~6番
ルノー・カピュソン(ヴァイオリン)
ダヴィド・フレイ(ピアノ)
(ワーナー)WPCS-13808 3024円
カピュソンとフレイで美しき天上の音楽
ルノー・カピュソンの天に飛翔 していくような軽やかで情感豊かな響きは、ヴァイオリンを聴く醍醐味を味わわせてくれる。ここにバッハ好きなダヴィド・フレイの音が重なると、美しき天上の音楽が生まれる。カピュソンのバッハは堅苦しくなく自由で開放的。フレイのバッハはエレガントで弱音が美しい。このコンビ、ぜひナマで聴きたいと切望する。特に「アダージョ」が印象的で、バッハが2台の楽器を対話させている様子がよくわかる。
オペラ&声楽
石戸谷結子◎音楽評論家
プッチーニ:歌劇「トスカ」
アニヤ・ハルテロス(トスカ)、アレクサンドルス・アントネンコ(カラヴァドッシ)、リュドヴィク・テジエ(スカルピア)、他
クリスティアン・ティーレマン(指揮)
シュターツカペレ・ドレスデン&ザルツブルク音楽祭および劇場児童合唱団
ミヒャエル・シュトゥルミンガー(演出)
(キングインターナショナル)KKC-9394〈BD〉、KKC-9395〈DVD〉
オープン価格
※輸入盤、C Major原盤、日本語字幕付き
時代設定は現代だが、プッチーニの旋律がよく浮かび上がる演奏
2018年ザルツブルク・イースター音楽祭のライヴ。ハルテロス、アントネンコ、テジエと主要キャストをそろえた豪華舞台だが、この日アントネンコの調子がいまひとつ。シュトルミンガーの演出は、現代風に時代を移しており、スカルピアはケイタイやエアロバイクを使う。とはいえ全体はオーソドックス。歌唱ではテジエが充実した声と凄みのある演技でスカルピアを熱演。注目のティーレマンの指揮はプッチーニの旋律を浮かび上がらせ、迫力もある。ラスト・シーンは衝撃だ。
「オペラを聴きたくて」
●ヴェルディ:「運命の力」序曲●「アイーダ」より「凱旋の合唱」
●ビゼー:「カルメン」より「恋は野の鳥」
●プッチーニ:「ラ・ボエーム」より「冷たい手を」「私の名はミミ」、他全28曲
ネトレプコ、ガランチャ、フレミング、カウフマン、ビリャソン、ターフェル、パヴァロッティ、ドミンゴ、R・シャイー(指揮)
ミラノ・スカラ座管弦楽団、他
(ユニヴァーサル)UCCS-1247/8 2268円
古今のスター歌手たちによる名唱の数々でオペラの喜びを知る
オペラのアリアや序曲など聴きどころばかりを集めた2枚組コンピレーション・アルバム。まず集められたアーティストが凄い!指揮者ではクライバー、カラヤン、アバドなど、歌手ではネトレプコ、カウフマン、ガランチャと現在のトップスターに加え、ドミンゴ、パヴァロッティ、カバリエと往年の大スターの歌唱も聴ける。個人的にはフレミングが入っているのが嬉しい。大レーベルならではの豪華絢爛な贅沢アルバム。ラストを粋なオペレッタでしめるのもおしゃれだ。