交響曲・管弦楽曲・協奏曲
岡本稔◎音楽評論家
シューマン:交響曲第4番
シューマン:4本のホルンと管弦楽のためのコンツェルトシュトゥック、他
シュテファン・ドール、他(ホルン)
パーヴォ・ヤルヴィ(指揮)
ドイツ・カンマーフィルハーモニー
(ソニー)SICC-10208 2940円
SACDハイブリッド
シューマンの奥深いロマン的世界を現出させる
パーヴォ・ヤルヴィとドイツ・カンマーフィルハーモニー・ブレーメンによるシューマン交響曲全集の完結編。交響曲第4番は1851年版を使用。1841年の初稿ではなく、楽器の重ね塗りによって響きに厚みが加わった改訂版の特徴をヤルヴィは鮮やかなタッチで描き出し、シューマンの奥深いロマン的世界を現出させている。「4つのホルンのためのコンツェルトシュトゥック」では、ベルリン・フィルのドールをはじめとする名手が腕を競う。
バッハ:ヴァイオリン協奏曲第1番、第2番
オーボエとヴァイオリンのための協奏曲、他
ジャニーヌ・ヤンセン(ヴァイオリン)
ラモン・オルテガ・ケロ(オーボエ)
ヤン・ヤンセン(チェンバロ)、他
(ユニバーサル)UCCD-1391 2500円
モダン楽器でバッハにふさわしい様式感を的確に
ヤンセンが自ら主宰するユトレヒト国際室内楽フェスティバルで共演を重ねている仲間たちと録音したバッハの作品集。モダン楽器を使用しながらもバッハにふさわしい様式感を的確に醸成している。2つのヴァイオリン協奏曲、オーボエとヴァイオリンのための協奏曲はいずれも音楽する喜びにあふれたもの。ヤンセンの父ヤンの伴奏によるチェンバロとヴァイオリンのためのソナタ第3番、第4番も作品の持ち味を的確に表現した演奏だ。
器楽・室内楽
伊熊よし子◎音楽ジャーナリスト
ワルツ選集
~ショパン、シャブリエ、セヴラック、ドビュッシー、マスネ他
●シャブリエ:アルバムの綴り●ショパン:華麗なワルツ
●ピエルネ:ウィーン風●グリーグ:思い出、他
アルド・チッコリーニ(ピアノ)
(キングインターナショナル)LDV-13
オープン価格
チッコリーニの年齢を超えた神がかり的なピアノ
チッコリーニは、ライヴを聴くとあまりにも情熱的で躍動感にあふれ、前向きなその演奏に驚嘆させられるが、ここに登場した13曲のワルツ集も、年齢を超えた神がかり的なピアノに心が打たれる。得意のサティでは洒脱で上質な大人の音楽を聴かせ、ブラームスでは滋味豊かな響きに 頭を垂れて聴き入ってしまう。音のひとつひとつに88歳の巨匠の生き方が映し出され、説得力が強い。なんと美しく香り高いことか。音と音の間が絶妙だ。
オペラ・声楽
石戸谷結子◎音楽ジャーナリスト
ハンス・ホッター メモリアル・アルバム
~「冬の旅」「ドイツ・リートの夕べ1969」~
ハンス・ホッター(バス・バリトン)
ハンス・ドコウピル(ピアノ)
(ソニー)SICC-10206/7 5040円
45年前に来日したドイツの大歌手によるライヴ録音
ホッターが5度目に来日した1969年公演のライヴ録音。この時彼は60歳、すでに声の輝きものびやかさも失われつつあったが、そのとつとつとした語り口のなかに、聴き手は彼の深い人間性を感じる。この主人公は若者ではなく、冬枯れの道を歩く老人だ。聴き進むうちにその老人がいまも持つ強い情熱や確固たる意志に触れ、孤独と向き合う姿に感動する。「リートの夕べ」は選曲が渋く、バスの声が低く響き孤独感はさらに深まる。こちらは初のCD化。
輸入盤
鈴木淳史◎音楽評論家
ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲第6&7番「大公」
アレクサンドル・メルニコフ(フォルテピアノ)
イザベル・ファウスト(ヴァイオリン)
ジャン=ギアン・ケラス(チェロ)
(Harmonia Mundi France)HMC-902125
オープン価格
豪華なメンバーで正統的な「大公」トリオ
ケラスがシュタイアーとゼペックと録音した三重奏曲集の続編を心待ちにしていたが、出たのはこのアルバム。でも、こちらも豪華すぎるメンツ。前回のシュタイアーたちとの盤は、絶妙なアンサンブルと古楽器による未知のサウンドが追求されていたけど、今回3人の名人がガチでぶつかり稽古という正統的、でもピリオド寄りでは初めてという快挙。「大公」で2つの弦楽器のピチカート部分には、やはりフォルテピアノの音がよく溶け合う。