交響曲・管弦楽曲・協奏曲
岡本稔◎音楽評論家
ウィーン・フィル・サマーナイト・コンサート 2014
●ベルリオーズ:序曲「ローマの謝肉祭」、「ベンヴェヌート・チェッリーニ」序曲、R.シュトラウス:「ブルレスケ」、リスト:交響詩「マゼッパ」、他
クリストフ・エッシェンバッハ(指揮)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ソニー)SICC-1711 2592円
作品の特性を浮かび上がらせたラン・ランとの共演
2014年5月29日にシェーンブルン宮殿の野外で催されたコンサートのライヴ。リヒャルト・シュトラウスの生誕150周年を記念して、その作品が中心に据えられている。ラン・ランをソリストに迎えた「ブルレスケ」では、このピアニストの 燦然 たる技巧が縦横に発揮され、作品の特性がくっきりと浮かび上がる。「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」でのオーケストラの精彩に富んだ表現も印象的だ。ベルリオーズ、リストの作品も一聴の価値がある。
R.シュトラウス:「ドン・キホーテ」、チェロ・ソナタ
マキシミリアン・ホルヌング(チェロ)
ヘルマン・メニングハウス(ヴィオラ)
パウル・リヴィニウス(ピアノ)
ベルナルド・ハイティンク(指揮)
バイエルン放送交響楽団
(ソニー)SICC-30174 2808円
縦横な活躍を見せるソロで作曲家の世界を生き生きと描く
ホルヌングは1986年生まれのドイツのチェリスト。バイエルン放送響の首席奏者を務めたのち、現在はフリーで活躍している。「ドン・キホーテ」は2012年のライヴ収録。ハイティンクの含蓄に富んだ指揮のもと、R.シュトラウスの音楽の世界を生き生きと描き出している。ヴィオラのメニングハウスとともに、ソロは縦横の活躍をみせる。チェロ・ソナタは14年の収録。リヴィニウスのピアノとともに、R.シュトラウスの若書きの作品の魅力をありのままに披露。
器楽・室内楽
伊熊よし子◎音楽ジャーナリスト
R.シュトラウス&マーラー:ピアノ四重奏曲集・歌曲集
●R.シュトラウス:ツェツィーリエ/夜/あすの朝/献呈/ひそやかな誘い/万霊節
●マーラー:思い出/麗しきトランペットが鳴り響くのは
フォーレ四重奏団
ジモーネ・ケルメス(ソプラノ)
(ソニー)SICC-30175 2808円
室内楽の醍醐味を味わわせてくれるピアノ・カルテット
R.シュトラウス生誕150年の今年、フォーレ四重奏団が画期的なアルバムを作り上げた。若き時代のシュトラウスとマーラーのピアノ四重奏曲と歌曲を組み合わせるという構成だ。フォーレ四重奏団は1995年にドイツ・カールスルーエ音大卒の4人によって結成された。音楽が斬新で濃密、室内楽の醍醐味を味わわせてくれる。ソプラノのジモーネ・ケルメスもロマンあふれる歌曲を深々とした美しい響きでうたい上げ、夢のような世界へといざなう。
ベルク:抒情組曲
シェーンベルク:浄夜
ジャン=ギアン・ケラス(チェロ)
アンサンブル・レゾナンツ
(キングインターナショナル)KKC-5394 3086円
情感豊かな「浄夜」と世界初録音の「抒情組曲」全曲版
チェロのジャン=ギアン・ケラスが音楽監督を務めるアンサンブル・レゾナンツと、ベルクとシェーンベルクがはげしく熱く深い愛を曲に託した2曲を録音。「抒情組曲」はオランダの作曲家ヴェルベが弦楽オーケストラ版に編曲し、同アンサンブルが2010年にフランス初演したもので、今回の全曲版は世界初録音。「浄夜」とともに作曲家が曲に託した「愛」を官能的に、心の内を吐露するように、情感豊かに表現。狂おしいまでの愛がここにはある。
オペラ・声楽
石戸谷結子◎音楽ジャーナリスト
ラヴェル:歌劇「子供と魔法」
イザベル・レナード(子供)
イヴォンヌ・ネフ(母親、中国茶碗、トンボ)ほか
小澤征爾(指揮)
サイトウ・キネン・オーケストラ&
SKF松本合唱団ほか
(ユニバーサル)UCCD-1403 3240円
病から復帰、小澤の繊細な表現力が際立ったラヴェルのオペラ
2013年サイトウ・キネン・フェスティバルで上演された「子供と魔法」は、病から再起した小澤征爾の力を再認識させるものとなった。この曲は、子供と多くの動物が登場する複雑に入り組んだ万華鏡のようなオペラだが、オザワは持ち前の繊細な表現力で、ファンタジックで極度に洗練された作品に仕上げた。子供の役はメットで大躍進中の若手メゾ、イザベル・レナード。母親役のイヴォンヌ・ネフや雨蛙役のフーシェクールなど名ベテランが脇を固めた。