交響曲・管弦楽曲・協奏曲
岡本稔◎音楽評論家
シューベルト:交響曲全集
●シューベルト:ミサ曲第5、6番/歌劇「アルフォンゾとエストレッラ」
ニコラウス・アーノンクール(指揮)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(キングインターナショナル)KKC-5445/53
8CD、ブルーレイ(映像+オーディオ) 17280円
ベルリン・フィルの機能を生かしヒューマンな名演を実現
2003年から06年にかけて、アーノンクールがベルリン・フィルに客演して演奏したシューベルト・チクルスを集大成した豪華アルバム。交響曲についてはロイヤル・コンセルトヘボウ管を指揮した1992年の録音もあるが、ベルリン・フィルの場合、その高い機能性をありのままに生かし、しかも機械的に陥ることなく、ヒューマンな名演を実現していることが実感される。ミサ曲における祈りの感情の表出、歌劇「アルフォンゾとエストレッラ」の作品本来の持ち味を活かした表現も秀逸。
ドヴォルザーク:交響曲第8番、第9番「新世界より」
イルジ・ビエロフラーヴェク(指揮)
チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
(ユニバーサル)UCCD-1422 2700円
真正面から作品に向かいドヴォルザークの妙味を引き出す
ビエロフラーヴェクは1990年にチェコ・フィルの首席指揮者に就くものの、自由化後の混乱の影響を受けて、程なく職を辞した。その後、チェコ・フィルは首席指揮者が頻繁に交代する変動期に入った。このディスクは2012年に首席に復帰した翌年に収録されたもの。チェコを代表する指揮者がチェコの名門とともにドヴォルザークと取り組んだ成果としては、非常に高いものが要求される。この録音は奇を 衒うことなく真正面から作品に向かい、その妙味を引き出したものと言える。
室内楽・器楽
伊熊よし子◎音楽ジャーナリスト
メンデルスゾーン:弦楽四重奏曲第2番
ベルク:抒情組曲
テツラフ・カルテット/クリスティアン・テツラフ(第1ヴァイオリン)
エリーザベト・クッフェラート(第2ヴァイオリン)
ハンナ・ヴァインマイスター(ヴィオラ)
ターニャ・テツラフ(チェロ)
(キングインターナショナル)KKC-5458 3240円
内なる動機を繊細さと力動感を併せ持つ響きで表現
ヴァイオリニストのクリスティアン・テツラフが1994年に結成したテツラフ・カルテットが、20年間演奏を積み上げた成果をロマン豊かなメンデルスゾーンと情感あふれるベルクで発揮、緊密なアンサンブルを聴かせている。2曲には「隠された愛の物語」という共通テーマがあり、メンデルスゾーンはベートーヴェン、ベルクは人妻ハンナへの愛が秘められている。内なる動機を繊細さと力動感を併せ持つ響きで表現、濃密な愛が浮かび上がる。
ソングス・フロム・アーク・オブ・ライフ
●バッハ/グノー:アヴェ・マリア●ブラームス:子守歌●ドヴォルザーク:わが母の教えたまいし歌●フォーレ:パピヨン●エルガー:愛のあいさつ●サン=サーンス:白鳥、他
ヨーヨー・マ(チェロ)
キャサリン・ストット(ピアノ)
(ソニー)SICC-30234 3000円
30年共演を重ねるマとストットがこよなく愛する曲
ヨーヨー・マと盟友キャサリン・ストットが、30年共演を重ねるなかで「自分たちがこよなく愛する曲でアルバムを作りたい」と考え、人生を表現するようなCDを完成させた。解説書には各曲に対するふたりの思い出などが書かれ、それを読みながら聴き進めると選曲への理解がより深まる。のびやかで明朗なヨーヨーの弦と主張の明確なキャサリンのピアノが融合し、全編に音楽する喜びがあふれ、嬉々としたデュオが聴き手をも愉しませる。
オペラ&声楽
石戸谷結子◎音楽ジャーナリスト
誰も寝てはならぬ~プッチーニ・アルバム
●プッチーニ:歌劇「ラ・ボエーム」より「おお、うるわしい乙女よ」/歌劇「つばめ」より「パリ! 欲望の都市」、ほか全16曲
ヨナス・カウフマン(テノール)
アントニオ・パッパーノ(指揮)
ローマ・サンタ・チェチーリア管
(ソニー)SICC-30235/6 3240円
※BLU-SPEC、DVD付き
哀愁を帯びた声がプッチーニにぴったりのカウフマンの新盤
「いまプッチーニにはまっている」と語っていたカウフマン。デビュー作の「妖精ヴィッリ」から「トゥーランドット」まで全11作品(女声のみの作品除く)を収録。しかもアリアだけでなく、曲によっては場面を追って選曲しているのが、完璧主義の彼らしい。その声は哀愁を帯びてプッチーニの音楽に良く合い、情熱的にドラマチックに歌っている。特典のDVDでは録音風景のほか、プッチーニについて自ら語り、またオペラ2作品の舞台も紹介。これは必見の映像です!