新譜CD&DVD vol.62(2018.06)

交響曲・管弦楽曲・協奏曲

岡本稔◎音楽評論家

ブレンデル・ライブ・イン・ウィーン

●シューマン:ピアノ協奏曲、ブラームス:ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ
アルフレッド・ブレンデル(ピアノ)
サイモン・ラトル(指揮)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 
(ユニバーサル)UCCD-1462 3024円
録音:2001年(シューマン)、1979年(ブラームス)

聴き手をロマン的な情緒で包み込み感動へ誘う

 シューマンは2008年にコンサート活動から引退したブレンデルが2001年に残していたライヴ。なんと含蓄に富んだ音楽だろうか。その懐は極めて奥深いが巨匠然とした偉ぶったところは微塵みじんもなく、聴き手をロマン的な情緒で包み込んで感動へと誘う。その風格の高さは特筆に値する。ラトル指揮のウィーン・フィルがそうしたソロに的確に呼応する。ブラームスの「ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ」は1979年のライヴ。こちらも味わいに富む。

バルトーク:ヴァイオリン協奏曲第1番、第2番

ルノー・カプソン(ヴァイオリン)
フランソワ=グザヴィエ・ロト(指揮)
ロンドン交響楽団
(ワーナー)WPCS-13761 2808円
録音:2017年

カプソンが満を持して問うバルトークのヴァイオリン協奏曲

 膨大なレパートリーを備えるルノー・カプソンが満を持して世に問うバルトークの2つの協奏曲。演奏機会については比較的少ない2曲だが、いずれもベートーヴェンやブラームスに比肩する名作であることを明らかに。初期に成立した第1番ではロマンティックな側面や民族的な要素を的確に表出。円熟期の第2番では盛り込まれた多彩な作曲技法を効果的に活かしている。ロトの指揮するロンドン響も盛り込まれた情報量を余すところなく表現。

室内楽・器楽

伊熊よし子◎音楽ジャーナリスト

月の光~ドビュッシー、ラヴェル、フォーレ:作品集

●ドビュッシー:2つのアラベスク第1番/夢想/月の光(《ベルガマスク組曲》から)/小さな羊飼い(《子供の領分》から)/レントより遅く/《前奏曲集》第1巻第1曲:デルフィの舞姫●フォーレ:舟歌第6番●ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ/悲しげな鳥たち(《鏡》から)、他
メナヘム・プレスラー(ピアノ)
(ユニバーサル)UCCG-1792 3024円

94歳のデビュー盤は得意のフランス作品

 メナヘム・プレスラーが94歳でドイツ・グラモフォンのソロ・デビューを果たした。彼は1946年にサンフランシスコで開催されたドビュッシー国際コンクールで優勝している。このアルバムは得意とするドビュッシー、長年愛奏しているラヴェル、フォーレというフランス作品が組まれている。演奏は繊細で精緻で情感あふれる特有のピアニズム。聴き手の心奥に訴えかける浸透力の強い演奏で、作曲家への深い敬愛の念が凝縮している。

音楽史・バロック

安田和信◎音楽評論家

ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲集《四季》、ほか

●ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲「ムガール大帝」/
ヴァイオリン協奏曲「安らぎ」/ヴァイオリン協奏曲「恋人」
レイチェル・ポッジャー(ヴァイオリン・指揮)
ブレコン・バロック
(チャンネル・クラシックス)RCCSSA-40318 3497円
(SACDハイブリッド)〈録音:2017年〉

バロック・ヴァイオリンの大スターによる気品ある「四季」

 バロック・ヴァイオリンの数少ない大スターによる《四季》が満を持して登場。多くのソリストたちが近年では描写性を増幅する過激な演出を競ってきた。本盤でもそうした要素がないわけではないが、ポッジャーは彼女の特質とも言える気品を常に失わない。技巧の確かな奏者でなければ実現不可能な演奏と言えるだろう。低音陣4人の総勢7人のオケも少数編成ならではの機動力と切れ味を持ち、ソロの音楽を鼓舞している。

輸入盤

鈴木淳史◎音楽評論家

モーツァルト:ピアノ・ソナタ第14番、第16番、第18番

●モーツァルト:幻想曲ハ短調K.457
マクシム・エメリャニチェフ(フォルテピアノ)
(Aparte)AP-161 オープン価格

ムジカ・エテルナの通奏低音奏者が弾くモーツァルト

 クルレンツィスが指揮したダ・ポンテ3部作録音で、闊達かったつに通奏低音を奏でて注目を集めたエメリャニチェフが弾くソナタ集。フォルテピアノ奏者だけでなく、ロジェストヴェンスキーに師事した若手指揮者としても活躍中だ(9月に東京交響楽団に客演予定)。幻想曲とセットになったソナタ第14番では、繊細な音色変化とドラマティックな運び、第16番は主題が繰り返されるたびに表現がくるくると変化する大胆なロココ風味が絶品。

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