新譜CD&DVD vol.117(2023.01)

交響曲・管弦楽曲・協奏曲

岡本稔◎音楽評論家

シベリウス:交響曲第2番、第5番

クラウス・マケラ(指揮)オスロ・フィル
(ユニバーサル)UCCD45018 3080円

若き才能と感性が反映された日本限定カップリング盤

 先のパリ管との来日でも才能のきらめきを如実に感じさせたマケラの初の国内盤。海外でリリースされた全集からの日本限定のカップリングである。2020年から首席指揮者の任にあるオスロ・フィルとの呼吸はぴったり。故国の大作曲家の名作の全貌を克明に明らかにする。作品の表現イディオムを熟知した楽員たちは、この上なく雄弁に音楽を語りだす。20代半ばのマケラのみずみずしい感性も如実に反映されている。やはり只者ではない。

ロット:交響曲第1番、マーラー:「花の章」、
ブルックナー:交響的前奏曲

ヤクブ・フルシャ(指揮)バンベルク交響楽団 
(ユニバーサル) UCCG45063 3080円

再評価進むロットの交響曲の魅力をありのままに表現

 マーラーより2年前に生まれ、26歳で亡くなったロットの交響曲第1番は、オーストリア国立図書館に眠っていた草稿やパート譜をもとに演奏可能な状態に復元され、1989年に初演、以来、再評価が急速に進んでいる。フルシャとバンベルク響による演奏は、作品への深い共感のもと、その魅力をありのままに表現したもの。オーケストラの伝統に根差した豊かな響き、芳醇な音色も作品にふさわしい。ロットと同時代の2作品を所収。

室内楽・器楽

伊熊よし子◎音楽評論家

ドヴォルザーク:詩的な音画集(全13曲)

レイフ・オヴェ・アンスネス(ピアノ)
(ソニー)SICC30700 ※Blu-spec CD 2

作曲家の生地を思わせる静謐で平穏、幻想的な演奏

 レイフ・オヴェ・アンスネスが子どものころから親しんできた、ドヴォルザークの「忘れられた大曲」といわれる「詩的な音画集」全曲録音に着手した。ショパン、グリーグ、シューマン、スカルラッティを思わせる曲想に心が洗われるような感覚を抱く。今後、アンスネスは演奏会でも取り上げるという。ドヴォルザークの生地ネラホゼヴェスを訪れたことがあるが、その地の空気を思い出すような静謐で平穏で、どこか幻想的なアンスネスの演奏だ。

オペラ&声楽

石戸谷結子◎音楽評論家

ヴェルディ:歌劇《グスターヴォ3世(仮面舞踏会)》

ピエロ・プレッティ(グスターヴォ3世)、アンナ・ピロッツィ(アメーリア)、アマルトゥフシン・エンクバット(アンカーストレーム伯爵)、ほか
ロベルト・アバド(指揮)フィラルモニカ・アルトゥーロ・トスカニーニ&パルマ・レッジョ劇場合唱団
演出:ヤコポ・スピレイ(原案:グレアム・ヴィック)
(ナクソス)NYDX50248 4950円
※BD、輸入盤、DYNAMIC原盤、日本語字幕・解説付き

スウェーデンを舞台にした名作≪仮面舞踏会≫のオリジナル版

 2021年9月、パルマ王立歌劇場ライヴ。スウェーデン国王暗殺事件を題材にしたオリジナル台本を復元、また最新の批判校訂版を使用した注目の舞台。登場人物は原作通りの名前に変わり、舞台もスウェーデンに戻されているが、全体の印象に大きな変化はない。ヴィックの原案を基にしたスピレイの演出は、妖しい人々がうごめく幻想的な舞台。主役のプレッティ、アメーリア役のピロッツィ、伯爵役のモンゴル出身のエンクバットと歌手が揃い、アバドの指揮が冴える。

輸入盤

鈴木淳史◎音楽評論家

ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲集―ピゼンデルとその周辺

●ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲ト長調 RV 314/同ニ長調
RV 226/同変ロ長調 RV 369、ほか
ジュリアン・ショヴァン(ヴァイオリン&指揮)、
コンセール・ド・ラ・ローグ
(Naive)OP7546 オープン価格

凛とした響きで、鮮烈ながら地に足が付いたヴァイオリン

 バロック期のドイツを代表するヴァイオリン奏者ピゼンデルに捧げられた(あるいは彼にまつわる)作品を収録。ヴィヴァルディのほかの協奏曲と比べ、気品があり、ドラマティックなのはこの名手のスタイルを意識したのか。ショヴァンのヴァイオリンも凛とした響きで、鮮烈ながら地に足が付いた演奏だ。緩徐楽章でのしっとりとした歌謡性も。彼が率いるフランスの古楽グループは、どっしり構えた一体感のあるアンサンブルで聴かせる。

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