vol.4 指揮 ニール・トムソン
「カサブランカ」「雨に唄えば」「サイコ」
名作シネマを生オーケストラで楽しむ
「臨場感ある耳にとっての3D映画体験」
名作映画を生演奏のオーケストラで楽しむ「名作シネマとオーケストラ」(シネオケ)の第2弾が7月に行われる。今回は「カサブランカ」「雨に唄えば」「サイコ」の3本。デジタル技術を駆使して、映画からせりふや効果音などオリジナル音源を残し、音楽だけをオーケストラで生演奏することで新たな楽しみと驚きをもたらす。映画に合わせて指揮をするという難しい作業を行うニール・トムソンにシネオケの面白さなどを聞いた。
― このユニークなプロジェクトについてどうお考えですか?
本当にユニークですよね。オーケストラの生演奏が加わることにより、普通に映画を見るだけでは感じることのできない、臨場感を得ることができる鑑賞体験だと思います。耳にとっての3D映画体験と私はよく言うのですが。指揮者とオーケストラにとって、スクリーン上のドラマと触れるわけですが、我々は受け身にもなるし、ドラマを増幅することもできるんです。
― 時間が決まっている映画にぴたりと音楽を合わせていくという作業はとても困難なことと思います。
映画にシンクロするのは極めて難しいです。クリックトラックがなく、アナログの時計のみ。なので1秒、0.5秒、0.25秒という刻みで、対応しなければいけないんです。通常、練習用のDVDを公演の何カ月か前に受け取ります。その練習用のDVDは、オーケストラの音楽部分が取り除かれていて、時計が右角にあります。最初にやらなければいけないことは、楽譜にタイミングを書き込むことです。次に映像に音楽を合わせる練習、これに約2カ月費やします。全てのテンポを記憶するために、身体が覚えるようになるまで、何度も何度も練習しなければならないのです。
― 名曲の続く「雨に唄えば」、バーナード・ハーマン作曲の「サイコ」、「アズ・タイム・ゴーズ・バイ」が有名な「カサブランカ」、それぞれの音楽の特徴は。
「雨に唄えば」は、すばらしく豪華なハリウッド編成。ビックバンドのナンバーで構成されたミュージカル作品の名作です。「カサブランカ」のマックス・スタイナーのスコアは、ハリウッド映画の大作(スタイナーは「風と共に去りぬ」も作曲)で、リヒャルト・シュトラウスの音楽を思い起こします。「サイコ」の音楽は、とにかく素晴らしい。バーナード・ハーマンは全て弦楽器で曲を作りました。彼のスコアは、シェーンベルクとバルトークを色濃く反映していると思います。
― 日本のオーケストラの指揮は経験がありますか?
日本に行ったことはありませんし、日本のオーケストラと働いたこともないんです。でも私の同僚はみな、日本のオケのプロ意識と反応の良さを絶賛していました。東京フィルハーモニーと一緒に仕事ができるのをとても楽しみにしています。
Neil Thomson
イギリスの指揮者。1966年生まれ。
イギリス王立音楽大学ではじめヴィオラを学ぶ。指揮をノーマン・デル・マールに師事。さらに米タングルウッドでレナード・バーンスタインと小澤征爾に学ぶ。96年から2006年まで、王立音楽大学の指揮科主任を務める。最近はロンドン響、BBC響などやデンマーク、イスラエル、イタリアなどで指揮している。モーツァルテウム音楽院の客員教授などを務め、ロリン・マゼール指揮コンクール、プロコフィエフ指揮コンクール(サンクト・ペテルブルク)などの審査員をしている。
名作シネマとオーケストラ(シネオケ)
7月19日(金)14:00 「カサブランカ」
7月19日(金)18:30 「サイコ」
7月20日(土)12:00 「カサブランカ」
7月20日(土)16:30 「雨に唄えば」
7月21日(日)12:00 「雨に唄えば」
7月21日(日)16:30 「サイコ」
会場:東京文化会館大ホール
ニール・トムソン(指揮)東京フィル
■問い合わせ:キョードー東京
0570-550-799
http://cine-oke.com