交響曲・管弦楽・協奏曲
マーラー:交響曲第9番
グスターボ・ドゥダメル(指揮)
ロサンゼルス・フィルハーモニック
(ユニバーサル)UCCG-1611/2 3000円
ドゥダメル&ロス・フィル、コンビの充実を示す1枚
2012年の収録。ドゥダメルがロサンゼルス・フィルの音楽監督に就任したのは2009年のこと。これが両者の組み合わせによる最初のCDにあたる。第1楽章では過度に深刻ぶることなく純音楽的なアプローチを貫き、それが大きな説得力を獲得している。第2楽章でも落ち着いた表現で音楽そのものに語らせている。第3楽章のロンド=ブルレスケでも感情が先走りすることがない。第4楽章の自然な呼吸に支えられた表現も印象的だ。
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲
ヨアヒム:ヴァイオリン協奏曲
クリスティアン・テツラフ(ヴァイオリン)
トーマス・ダウスゴー(指揮)
デンマーク国立交響楽団
(EMI)TOCE-56516 1400円
切れ味鋭い響きと熱い情熱が秘められた表現
テツラフならではの切れ味鋭い刃物を想わせる響きによるブラームス演奏である。表面的にはクールな印象を与えるが、そこには熱い情熱が秘められており、こけおどしではない感動をもたらす。第2楽章の精妙な表現、第3楽章の鮮明な筆致も印象深い。ヨアヒムのヴァイオリン協奏曲第2番「ハンガリー風」は作曲家ヨアヒムを知る上で興味深い作品である。テツラフはここでもストレートな表現で聴く者を魅了する。
器楽・室内楽
シューベルト:
ピアノ・ソナタ第16番&第21番
マリア・ジョアン・ピリス(ピアノ)
(ユニバーサル)UCCG-1613
2800円
聴き込むほどにシューベルトの深層へ導かれる
大ベストセラーを記録した96&97年録音のシューベルトの「即興曲集」から15年、ピリスが待望のシューベルトのピアノ・ソナタを録音した。シューベルトのソナタでは初出版の第16番と、最高傑作と称される最後のソナタ第21番という選曲。透明感に満ちた凛とした音色と推進力に富むリズム、豊かな歌心と深い情感が全編を彩り、聴き込むほどにシューベルトの世界の深層へと導かれる。ピリスの特質であるシンプルで自然な音楽全開。
オペラ・声楽
ビリャソン ヴェルディ 魂の歌
●ヴェルディ:歌劇「海賊」~見ろ、俺は囚われの身!/歌劇「リゴレット」~あれもこれもわしにとっては、ほか全15曲
ローランド・ビリャソン(テノール)
ジャナンドレア・ノセダ(指揮)
トリノ・レージョ劇場管弦楽団&合唱団
(ユニバーサル)UCCG-1615 3000円
※SHM-CD
歌いまわしの巧さ、情熱的歌唱でヴェルディの“人間の魂”を
ヴェルディ・イヤーにちなんだアルバム。ユニークなのは珍しいヴェルディの歌曲を収録していること。しかも編曲はベリオだ。ビリャソンは声の力強さや音量はいま少し全盛期に及ばないものの、繊細でニュアンス豊かな歌い方は以前と同じまで回復している。表現はより深くなり、まさに“人間の魂”を切々と歌いあげている。歌いまわしの巧さと、情熱的な歌唱は、まさに彼ならでは。後半はヴェルディの名アリアの数々を楽しませてくれる。
マリア・カラス 最新ベスト 生誕90周年
ロッシーニ:歌劇「セビリアの理髪師」~今の歌声は/
ドリーブ:歌劇「ラクメ」~若いインド娘はどこへ (鐘の歌)/
プッチーニ:歌劇「蝶々夫人」~ある晴れた日に、ほか全23曲
マリア・カラス(ソプラノ)
トゥリオ・セラフィン(指揮)
フィルハーモニア管弦楽団、他
(EMI)TOCE-90250/1 3200円 ※HQCD
中低音も超高音も充実したソプラノの至芸を最新リマスター盤で
中低音が充実しており、ドラマチック・ソプラノのレパートリーをも得意としたカラス、一方で超高音のコロラトゥーラ・アリアも歌いこなした希有なソプラノだ。最新リマスターの技術で、そんなカラスの声がより鮮明に蘇った。聴きものは「トスカ」の2幕のシーン。ドスの効いた台詞部分もドラマテックだ。超コロラトゥーラの「鐘の歌」も なんともスリリング。「今の歌声は」と「ありがとう、愛する友よ」は、その対象的な彼女の2つの面がよく分かる。