交響曲・管弦楽曲・協奏曲
岡本稔◎音楽評論家
ベートーヴェン、シューマン:交響曲第4番
●マーラー:「さすらう若人の歌」
クリスタ・ルートヴィヒ(メゾ・ソプラノ)
カール・ベーム(指揮)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(キング)KICC-1112 2500円
ライヴで完全燃焼するベーム最良の演奏記録
独オルフェオ・レーベルのザルツブルク音楽祭のライヴを国内リリースする「ザルツブルクの巨匠たち」シリーズの1枚。1969年に収録されたこの1枚では、ライヴで完全燃焼するベームの最良の演奏が記録されている。この上なくスケールが大きく、緊張感に満ち溢れたベートーヴェンは後年のセッションと趣を異にしている。クリスタ・ルートヴィヒの歌うマーラーの「さすらう若人の歌」も秀逸。シューマンの交響曲も白熱した名演だ。
プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番
バルトーク:ピアノ協奏曲第2番
ラン・ラン(ピアノ)
サイモン・ラトル(指揮)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ソニー)SICC30140/1(DVD付き)
2405円
20世紀を代表する協奏曲の精髄を表現し尽くす
2013年2月、4月のセッション録音。ラン・ランが現在の持ち味をありのままに示した演奏といえるだろう。強 靭 で正確な打鍵によって20世紀を代表するピアノ協奏曲であるプロコフィエフとバルトークの音楽の精髄を表現し尽くしている。共演するラトル指揮、ベルリン・フィルがピアノに比肩する正確無比な演奏でソロと絶妙な呼応をみせている。初回生産限定盤には、プロコフィエフの第1楽章と収録風景などを収めたDVDが付いている。
器楽・室内楽
伊熊よし子◎音楽ジャーナリスト
シューベルト:アルペジョーネ・ソナタ他
●シューマン:民謡風の5つの小品集●ドビュッシー:チェロ・ソナタ
●ブリテン:チェロ・ソナタ
ゴーティエ・カピュソン(チェロ)
フランク・ブラレイ(ピアノ)
(ワーナー)WPCS-12623 2730円
ブラレイと歌心あふれる情感豊かなデュオ
フランスの若きチェリスト、ゴーティエ・カピュソンは、長年シューベルトの三重奏曲や四重奏曲を演奏し、ゆっくりとシューベルトの真意に近づいていった。そして満を持して「アルペジョーネ・ソナタ」に挑戦。盟友のフランク・ブラレイと組み、歌心あふれる情感豊かなデュオを聴かせている。さらにブリテン生誕100年を記念し、ロストロポーヴィチに献呈されたチェロ・ソナタを収録。作曲家と初演者に敬意を表す演奏を行っている。
27の小品
ヒラリー・ハーン・アンコール
●ザデー:衝動●佐藤總明:微風●ユン:虎がハマナスに出会う時
●ラング:軽運送●ラム:秋の孤独●モラヴェク:ブルー・フィドル
●アブリル:第3の溜息、他
ヒラリー・ハーン(ヴァイオリン)
コリー・スマイス(ピアノ)
(ユニバーサル)UCCG-1642/3 3675円
委嘱曲26曲などハーンならではの斬新な企画
ヒラリー・ハーンはつい先ごろの来日公演で、自身の道をひたすら歩む迷いのない演奏を聴かせた。新譜も彼女ならではの斬新な企画。作曲家に委嘱した26曲の新作と公募の1曲で構成されたアンコール・ピース集だ。作曲家に直接交渉し、2年を費やして作品を習得し、録音にこぎつけたという。それぞれの曲がヒラリーの未来を切り開いていく心意気により新たな命を得、生命力あふれる音楽となっている。作曲家の楽曲解説にも要注目。
オペラ・声楽
石戸谷結子◎音楽ジャーナリスト
チャイコフスキー:歌劇「エフゲニ・オネーギン」
クラッシミラ・ストヤノヴァ(タチアナ)、ほか
ロビン・ティチアーティ(指揮)
コヴェント・ガーデン王立歌劇場管弦楽団&合唱団
カスパー・ホルテン(演出)
(OPUS ARTE)OA1120D 5249円 ※DVD
OABD7132D 6,299円 ※BD
※ 日本語字幕つき
歌手陣も豪華で、瑞々しさと繊細さが際立った叙情溢れる演奏
若手俊英、ティチアーティの指揮による「オネーギン」。“抒情的小景”として作曲者が描いたとおりの、瑞々しさと繊細さが際立った叙情溢れる演奏だ。演出はロイヤル・オペラ新芸術監督のカスパー・ホルテン。タチアナの回想として、少女時代のタチアナが登場し、ほろ苦い初恋の想い出を美しく描く。タチアナ役のストヤノヴァが安定した歌唱で堂々とした主役。オネーギン役のキーンリーサイド、レンスキー役のブレスリクも好演した豪華キャスト。