交響曲・管弦楽曲・協奏曲
岡本稔◎音楽評論家
ハイドン:交響曲第103番「太鼓連打」、
ミサ曲「太鼓ミサ」(戦時のミサ)
鈴木秀美(指揮)オーケストラ・リベラ・クラシカ 中江早希(ソプラノ)
布施奈緒子(アルト)谷口洋介(テノール)小笠原美敬(バス)
コーロ・リベロ・クラシコ
(Arte dell’arco/キングインターナショナル)ADJ-065 オープン価格
ティンパニが大活躍する2曲を組み合わせた好企画盤
ハイドンの作品の中でティンパニが大活躍する2曲を組み合わせた好企画盤。2018年のライヴ。ティンパニの即興的な連打で開始される交響曲第103番では、菅原淳のソロが印象的。鈴木秀美の指揮は作品の魅力を忠実に引き出そうとした、あくまで正攻法に徹したもの。ヴィブラートを排した弦の音色を主体にしたオーケストラが雄弁に音楽を語りだす。緩徐楽章の表現もニュアンスに富む。「太鼓ミサ」における、合唱も秀逸。
交響曲ライヴ録音集
~ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、ブラームス
●ハイドン:交響曲第101番「時計」
●モーツァルト: 交響曲第29番/セレナード第9番「ポストホルン」
●ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」/交響曲第7番
●ブラームス:悲劇的序曲/交響曲第4番、他
ニコラウス・アーノンクール(指揮)ヨーロッパ室内管
(ナクソス)NYCX-10254 6600円(4CD)
アーノンクールとヨーロッパ室内管による未発表音源
アーノンクールとヨーロッパ室内管による交響曲の未発表音源を集めたもの。グラーツのシュティリアルテ音楽祭での演奏を中心とした1989年から2004年のライヴ。いずれもほかの名門オーケストラを指揮した録音が存在するレパートリーだが、比較的小編成の柔軟な感性を持った楽員がいるこの団体ならではの魅力が活かされた演奏が揃っている。アーノンクールは鬼才然とした解釈を押し通すのではなく、ともに音楽を創り上げる姿勢を貫く。
室内楽・器楽
伊熊よし子◎音楽ジャーナリスト
ベートーヴェン:フェイト&ホープ
●ベートーヴェン:交響曲第5番《運命》(リスト編曲ピアノ・ソロ版)/ピアノ・ソナタ第8番《悲愴》/ピアノ・ソナタ第14番《月光》
●ニュウニュウ: 即興曲 第1番HOPE(希望)
ニュウニュウ(ピアノ)
(ユニバーサル)UCCD-1485 3080円
作品の内面を見極める目が備わり、演奏が肉厚に
ニュウニュウは10代後半で「自分の存在ではなく作品の内奥に迫りたい」という考えに至り、ピアニストとしての原点を見つめることに。そんなニュウニュウの新たな挑戦はベートーヴェンの「運命」(リスト編)と「悲愴」「月光」という組み合わせ。ドラマティックで情熱的な奏法は以前と変わらないが、そこに作品の内面を見極める目が備わり、演奏がとても肉厚になった。医療従事者への感謝と患者へのエールを込めた自作が印象に残る。
佐藤晴真~SOUVENIR~ドビュッシー&フランク作品集
●ドビュッシー:チェロとピアノのためのソナタ/美しき夕暮れ(チェロとハープ編)/レントより遅く(同)/月の光(ベルガマスク組曲 ~ 第3曲)(同)
●フランク:リート/ヴァイオリンとピアノのためのソナタ(チェロとピアノ編)
佐藤晴真(チェロ)、高木竜馬(ピアノ)、吉野直子(ハープ)
(ユニバーサル)UCCG-1886 3300円
しなやかで内省的な音色が幾重にも変容していく響き
2019年のミュンヘン国際音楽コンクールのチェロ部門で日本人初の優勝に輝いた佐藤晴真の第2弾は、ドビュッシーとフランク。ピアノとハープとの共演で、美しい旋律をのびやかに、雄弁に奏でている。佐藤晴真のチェロは低くしなやかで内省的な音色が特徴で、幾重にも変容していく響きの美学に心が奪われる。ときに一緒に歌いたくなる感覚を抱き、朗々と語りかける音に作品の美質が凝縮している。高木竜馬、吉野直子との息もピッタリ。
輸入盤
鈴木淳史◎音楽評論家
ウィーンの物語
●ドヴォルザーク:「ルサルカ」~月に寄せる歌●スメタナ:モルダウ
●ワーグナー:「ニュルンベルクのマイスタージンガー」~朝は薔薇色に輝いて
●リスト:前奏曲●レナエルツ:「ボエーム」の主題による幻想曲
●R.シュトラウス:「ばらの騎士」~ワルツ、他
アンネレーン・レナエルツ(ハープ),ウィーン・フィルのメンバー
(Warner)9029660797 オープン価格
歌唱性に加え、しっかりとした語り口で奏でられるハープ
ともすれば、あまりにも優美、そして装飾的に響きがちなハープ。ウィーン・フィルの首席奏者でもあるレナエルツは、歌唱性とともにしっかりとした語り口をもった楽器として聴かせてくれる。「マイスタージンガー」からのアリア、そしてリストの交響詩までハープ1台で、しかもその世界観を余さず伝えるのだから。2人のシュトラウス作品は、ホーネックなど豪華な同僚とのアンサンブル。これも独奏で聴きたかったというのは贅沢か。