新譜CD&DVD vol.110(2022.06)

交響曲・管弦楽曲・協奏曲

岡本稔◎音楽評論家

R.シュトラウス:交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」ほか

●マーラー:「亡き子をしのぶ歌」●モーツァルト:交響曲第40番、
フィッシャー=ディースカウ(バリトン)
カール・ベーム(指揮)ベルリン・フィル
(Testament/キングインターナショナル) KKC-6479/80 3410円(2CD)

ベームのライヴならではの高揚が何より魅力的

 国内初出となる1962年のザルツブルク・ライヴ。モーツァルトは遅めのテンポによる骨格のしっかりとした音楽。全盛期のベームらしい厳格かつ優美さを兼ね備えている。マーラーの「亡き子をしのぶ歌」はF=ディースカウのソロ。巨匠の顔合わせによる極めて含蓄に富む音楽。R.シュトラウスは堅固かつ緻密で、オーケストラの特性がフルに活かされている。3曲とも同時期のセッション録音が存在するが、ライヴならではの高揚が何より魅力的だ。

セルゲイ・ディアギレフ―バレエ・リュス

●ラヴェル:バレエ音楽「ダフニスとクロエ」
●ムソルグスキー:歌劇「ボリス・ゴドゥノフ」
●ストラヴィンスキー:バレエ音楽「春の祭典」、他
アンドレ・クリュイタンス(指揮)
パリ音楽院管 フョードル・シャリアピン(バス)
マックス・シュタインマン(指揮)
パリ・ロシア・オペラ管 ピエール・モントゥー(指揮)
パリ交響楽団、他
(ワーナー)9029647715 オープン価格(22CD)

ディアギレフの生誕150年記念で活動期間の全作品収録

 「バレエ・リュス」の主催者として、数多くの名曲の誕生にかかわったディアギレフの生誕150年を記念するボックス。活動期間の1909年から29年まで、上演された全作品が収録されている。初出はSP、LP、デジタル録音と様々な手段だが、名高い演奏家を中心とした録音はどれも極めて説得力が大きい。あまりにも名高いストラヴィンスキーの「春の祭典」については、初演者のモントゥーの歴史的録音のほかに、マルケヴィチの59年の録音も収録。

室内楽・器楽

伊熊よし子◎音楽ジャーナリスト

ベートーヴェン・フォー・スリー

●ベートーヴェン:交響曲第2番/交響曲第5番「運命」
エマニュエル・アックス(ピアノ)、
レオニダス・カヴァコス(ヴァイオリン)、ヨーヨー・マ(チェロ)
(ソニー) SICC-30592 2860円

3人の名手により新たな生命を帯びた作品として蘇る

 カヴァコスの新譜がもう1枚登場した。ピアノのエマニュエル・アックス、チェロのヨーヨー・マと組んだもので、交響曲第2番(ベートーヴェンの弟子フェルディナント・リース編にベートーヴェンが修正を施したもの)と交響曲第5番(コリン・マシューズの新編曲)という画期的な選曲だ。聴き慣れたシンフォニーが3人の名手の手によると新たな生命を帯びたようなみずみずしく斬新な作品として蘇り、ベートーヴェンの偉大さを伝える。

アンコール!

●シューベルト:楽興の時~第3番
●シューマン:トロイメライ(子供の情景~第7曲)
●リスト:コンソレーション第3番
●ショパン:夜想曲(第5番)
●ドビュッシー:月の光(ベルガマスク組曲~第3曲)
●アルベニス:タンゴ(組曲「スペイン~第2曲)、他
ダニエル・バレンボイム(ピアノ)  (ユニバーサル) UCCG-45040 2860円

長年にわたって愛奏し続けてきた小品を17曲

 最近、バレンボイムにインタビューすると、「いま私はピアノが弾きたくてたまらないんですよ」と熱く語る。その彼が天才少年と称されたころから80歳を迎える今年まで、長年にわたって愛奏し続けてきた美しい小品の数々を17曲録音した。いずれもバレンボイムの自然体で情熱的で思慮深いピアニズムに彩られているが、特に最後のアルベニスの「タンゴ」が心に響く。彼はスペイン作品が大好きだという。その思いが凝縮している。

輸入盤

鈴木淳史◎音楽評論家

ニールセン&シベリウス:ヴァイオリン協奏曲

ユーハン・ダーレネ(ヴァイオリン)
ヨーン・ストゥールゴールズ(指揮)
ロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団
(BIS)BISSA-2620 オープン価格(SACDハイブリッド)

しなやかなフレージングと彫りの深い表現

 スウェーデン生まれの若き奏者が北欧2大ヴァイオリン協奏曲に挑む。作曲者の名前を冠したコンクールで優勝した彼のニールセン作品では、バラバラな印象になりがちなこの曲をしっかりとまとめる構成力が光る。そして、細やかな歌謡からこそりと漂う民謡的な素材、変化と技巧に富んだカデンツァ。シベリウスもしなやかにして彫りが深い。ストゥールゴールズも独奏のフレージングに寄り添いつつ、きめ細やかなバランスで強力サポート。

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