新譜CD&DVD vol.20(2014.12)

交響曲・管弦楽曲・協奏曲

岡本稔◎音楽評論家

ブラームス:交響曲全集

●ブラームス:ピアノ協奏曲第1番/第2番/ヴァイオリン協奏曲、他
マウリツィオ・ポリーニ(ピアノ)
リサ・バティアシュヴィリ(ヴァイオリン)
クリスティアン・ティーレマン(指揮)
ドレスデン・シュターツカペレ
(ユニバーサル)UCCG1674(3CD+DVD)
9720円

ブラームスの音楽が持つ多彩な魅力をありのままに表現

 2011年から13年のライヴ収録。ティーレマンはブラームスを好んで取り上げてきたが、レコーディングはミュンヘン・フィルとの交響曲第1番のみだった。2012年にドレスデン・シュターツカペレの首席指揮者に就任したのを機に、4つの交響曲と2つのピアノ協奏曲、ヴァイオリン協奏曲、他を録音した。演奏は高い期待にこたえるに十分なもの。ブラームスの音楽が持つ多彩な魅力をありのままに表現している。ポリーニ、バティアシュヴィリのソロも感銘深い。

シューマン:ピアノ協奏曲

●プロコフィエフ「ロメオとジュリエット」第2組曲より
マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)
セルジュ・チェリビダッケ(指揮)
フランス国立放送管弦楽団
(アルトゥス)ALT-300
3337円

個性の異なるアルゲリッチとチェリビダッケの手に汗握る共演

 1974年の収録。シューマンのピアノ協奏曲では、アルゲリッチがチェリビダッケの構築した堅固な音楽の枠の中で独自の個性を発揮し、含蓄に富んだ音楽を聴かせている。ロマン的なかぐわしい情緒に満ちあふれ、ピアノが紡ぎ出すニュアンスの豊かさは驚くべきものがある。音楽的個性が大きく異なる両者から生まれる音楽は手に汗握るものがある。プロコフィエフの「ロメオとジュリエット」はチェリが好んで取り上げてきた作品で、この上なく雄弁な演奏を実現している。

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番

●ラフマニノフ:チェロ・ソナタ
河村尚子(ピアノ)
クレメンス・ハーゲン(チェロ)
イルジ・ビエロフラーヴェク(指揮)
チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
(ソニー)SICC-10214
3024円

ラフマニノフのロマン的な世界を素直に表現

 河村尚子の日本デビュー10周年を記念するリリース。ピアノ協奏曲は2013年のライヴ。過度に感傷的に陥ることなく、ラフマニノフのロマン的な世界を素直に表現しているところに好感が持てる。ビエロフラーヴェクの指揮するチェコ・フィルとの呼吸の妙も聴きもの。絶妙な応答を繰り返し、曲は大きな盛り上がりを見せる。クレメンス・ハーゲンとのチェロ・ソナタは2014年のライヴ。ハーゲンのソロをピアノがリードしている印象があり、その音楽はきわめて深い。

器楽・室内楽

伊熊よし子◎音楽ジャーナリスト

バッハ:平均律クラヴィーア曲集第1巻

ピエール=ロラン・エマール(ピアノ)
(ユニバーサル)UCCG-1672/3
3780円

精神性の高い演奏でバッハの真意に近づく

 J.S.バッハの「フーガの技法」の録音で自身のバッハ観を世に問い、大きな反響を得たピエール=ロラン・エマールが、次なるバッハとして「平均律クラヴィーア曲集第1巻」を録音、心に深く響く演奏を聴かせている。彼はこの曲集と 対  するため7カ月間サバティカルをとり、集中して練習したそうだ。エマールの演奏は精神性が高く、バッハの真意にひたすら近づくもの。テンポ、リズム、装飾音、対位法の扱いなどすべてが自然で洞察力に富む。

オペラ・声楽

石戸谷結子◎音楽ジャーナリスト

PURE《ピュア》マリア・カラス

●「恋は野の鳥」~ビゼー:「カルメン」より/「清らかな女神よ」~ベッリーニ:歌劇「ノルマ」より/「私のお父さん」~プッチーニ:「ジャンニ・スキッキ」より、ほか全18曲
マリア・カラス(ソプラノ)
(ワーナー)WPZS-30031/32 2808円
※DVD付き、初回限定盤
WPCS-12849 2160円 ※通常盤

世紀のディーヴァの歌声をクリアな音のリマスタリングで

 カラス生誕90年(2014年)を記念して、スタジオ録音された音源からリマスターして発売するというプロジェクトがスタート。これはその中からカラスの名唱をピックアップして1枚に収めたもので映画に使われた曲がテーマになっている。驚くのはその音質。クリアになり、よりダイナミックにカラスの声がよみがえる。カルメン、ノルマ、トスカ、ミミ、蝶々夫人などカラスが得意とした曲が網羅されている。またDVDが付いており、カルメン、トスカを歌うカラスの姿も見ることができる。

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