新譜CD&DVD vol.22(2015.02)

交響曲・管弦楽曲・協奏曲

岡本稔◎音楽評論家

パーヴォ・ヤルヴィ&ドイツ・カンマーフィルの世界

●ブラームス:ハンガリー舞曲第1番、3番、10番、ベートーヴェン:交響曲第1番より第1楽章、シューマン:「マンフレッド」序曲、他
パーヴォ・ヤルヴィ(指揮)
ドイツ・カンマーフィルハーモニー・ブレーメン
(ソニー)SICC-1751 
1800円

指揮者ヤルヴィの魅力ある演奏を集めたダイジェスト盤

 ブラームスの3つの「ハンガリー舞曲」はいずれも作曲者自身の編曲によるもの。良く親しまれた小曲ながら、ヤルヴィの手にかかると、さまざまな魅力が凝縮された小宇宙と化す。ベートーヴェンの「レオノーレ」序曲第3番、交響曲第1番の第1楽章、第7番の第4楽章も清新な魅力に満ち あふ れたヤルヴィならではの演奏。シューマンの「マンフレッド」序曲、交響曲第4番の第4楽章も現代的なロマン性を感じさせる名演だ。

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番

●ベートーヴェン:合唱幻想曲
レイフ・オヴェ・アンスネス(指揮)
マーラー・チェンバー・オーケストラ
プラハ・フィルハーモニー合唱団
(ソニー)SICC-30182 
2808円

室内楽的な対話の妙が発揮されたアンスネスの弾き振り

 2014年のライヴ録音で、アンスネスとマーラー・チェンバー・オーケストラのベートーヴェン:ピアノ協奏曲全集の完結編にあたる。アンスネスによる弾き振りの演奏。ピアノ協奏曲第5番では堂々とした風格を醸し出すが、威圧的に傾くことはなく、室内楽的な対話の妙が発揮されている。ソロは細やかなニュアンスに富んだもので、ベートーヴェンの詩的な情緒が余すところなく表現されている。「合唱幻想曲」も演奏機会のさほど多くない作品に光をあてたもの。

室内楽・器楽

伊熊よし子◎音楽ジャーナリスト

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第16番~第20番

●マウリツィオ・ポリーニ(ピアノ)
(ユニバーサル)UCCG-1691
3024円

情感豊かな温かい響きの円熟味あふれる演奏

 ベートーヴェンのピアノ・ソナタはピアニストにとって「バイブル」のような存在だといわれるが、その32曲の録音をマウリツィオ・ポリーニは1975年から39年という年月をかけて完成させた。最後はソナタ第16番~第20番。この間、演奏は理知的でコンピューターのように精確なものから徐々に人間味豊かなものへと変貌。この録音では情感豊かな温かい響きを備えた、円熟味あふれる演奏を聴かせている。新たなポリーニが発見できる盤。

オペラ・声楽

石戸谷結子◎音楽ジャーナリスト

モーツァルト:歌劇「コジ・ファン・トゥッテ」

●ジモーネ・ケルメス(フィオルディリージ)
マレーナ・エルンマン(ドラベッラ)、ほか
テオドール・クルレンツィス(指揮)
ムジカ・エテルナ
(ソニー)SICC-30183/5
6480円

大胆な解釈と躍動感、繊細でよく歌う個性的なモーツァルト演奏

 若き革命児?クルレンツィスのダ・ポンテ3部作、第2弾。ロシアのウラル山脈のふもとに位置するというペルミ歌劇場で、大胆な解釈の演奏を行っているクルレンツィス。今回も躍動感に あふ れ、しかも繊細でよく歌う個性的な演奏を繰り広げている。古楽器を使うので響きがやわらかく軽やかだ。フォルテピアノの響きがとくに新鮮。歌手は人気のケルメスをはじめ、フェランド役のターヴァー、デスピーナ役のカシアンなど、若手実力派を そろ えている。

「クリスマス・イン・ニューヨーク」

●「ウィンター・ワンダーランド」/「そりすべり」/「セントラル・パーク・セレナード」、ほか全13曲
ルネ・フレミング(ソプラノ)
ルーファス・ウェインライト(ヴォーカル)
クリス・ボッティ(フリューゲルホルン)
ブラッド・メルドー(ピアノ)、ほか
(ユニバーサル)UCCD-1407 
2808円 ※SHM-CD

多彩なゲストを迎え、米の名ソプラノが送るクリスマス・アルバム

 クリスマスの季節は名歌手によるクリスマス・ソングの発売が恒例だが、今年はフレミングの新譜がお目見えした。ジャズのナンバーが中心で、学生時代にジャズ・クラブでアルバイトをしていたこともあるというフレミングならではの本格的な歌唱だ。共演しているのはトランペットのウィントン・マルサリスやボーカルのグレゴリー・ポーターなど、ジャズ界の大御所。ニューヨークのクリスマスらしい、ゴージャスで都会的なおしゃれなアルバムだ。

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