交響曲・管弦楽曲・協奏曲
岡本稔◎音楽評論家
ベートーヴェン:三重協奏曲
●ベートーヴェン:「プロメテウスの創造物」序曲/「エグモント」序曲/「コリオラン」序曲
ジュリアーノ・カルミニョーラ(ヴァイオリン)
ソル・ガベッタ(チェロ)
デヤン・ラツィック(ピアノ)
ジョヴァンニ・アントニーニ(指揮)
バーゼル室内管
(ソニー)SICC-30248 2808円
今が旬の独奏者が作品の等身大の魅力を描く
ベートーヴェンの三重協奏曲は、超大物独奏者を招いた顔見世興行的な録音が多く行われた作品。そうした場合、個々のソリストの妙技にばかり注意が向けられ、作品本来の味わいに配慮が向けられることが少なかった。この録音ではカルミニョーラ、ガベッタ、ラツィックというピリオド楽器の解釈にも通じた今が旬のソリストを集め、作品の等身大の像を描き出すことに主眼が置かれている。アントニーニ指揮のバーゼル室内管弦楽団の鮮烈な響きも魅力的だ。
シューマン:交響曲全集(第1番~第4番)
サイモン・ラトル(指揮)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(キング・インターナショナル)KKC-5461 5616円
ラトルならではの鮮烈きわまるシューマンをSACD化
「ベルリン・フィル・レコーディングス」の第1弾として発売されたシューマンの交響曲全集は、通常のCDにブルーレイ・ディスクのオーディオとヴィデオなどを加えた豪華アルバムだった。今回のリリースでは、音声のみをSACDハイブリッドのフォーマットで収録したもの。演奏はラトルならではの鮮烈きわまるもの。SACDの再生では、CDよりも情報量が多くなったことが実感される。ブルーレイの音声との聴き比べも興味深くオーディオ・ファンにも薦められる。
室内楽・器楽
伊熊よし子◎音楽ジャーナリスト
《雨の歌》ライヴ
●モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタK.545●シューベルト:ヴァイオリン・ソナタD545●ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第1番「雨の歌」●ドビュッシー:亜麻色の髪の乙女
庄司紗矢香(ヴァイオリン)
メナヘム・プレスラー(ピアノ)
(ユニバーサル)UCCG-1714 3024円
90歳のプレスラーと庄司の熱く情感豊かな演奏
2014年4月、東京で庄司紗矢香とメナヘム・プレスラーのデュオが実現した。これは庄司が待ち望んだ共演で、90歳のプレスラーと熱く情感豊かな緊迫感ただよう演奏を繰り広げている。プレスラーはインタビューで、「彼女に直接会い、その演奏を聴き、日本まで行く決心をした」と語っている。演奏は両者の作品に対する深い共感を表すもので、ひとつひとつの音に意味合いが感じられ、深い感銘を受けた。ライヴでもその熱き臨場感が伝わる。
メンデルスゾーン:ピアノ三重奏曲第1番、ドヴォルザーク:ピアノ三重奏曲第4番「ドゥムキー」
ボザール・トリオ
ダニエル・ホープ(ヴァイオリン)
アントニオ・メネセス(チェロ)
メナヘム・プレスラー(ピアノ)
(ワーナー)WPCS-13263 2160円
「音楽のなかの“美”を見つける」という精神に貫かれる
プレスラーは53年におよび、ボザール・トリオで活躍。その最後のメンバー、ヴァイオリンのダニエル・ホープ、チェロのアントニオ・メネセスとの2004年の録音は、このトリオが結成当初から目指してきた「音楽のなかの“美”を見つける」という精神に貫かれている。メンデルスゾーンは気高く躍動感に満ち、ドヴォルザークはスラヴの色合いが濃厚。「ドゥムキー」はボザール・トリオのメインレパートリー。プレスラーの円熟したピアノが心に響く。
オペラ&声楽
石戸谷結子◎音楽ジャーナリスト
「ドミンゴ マイ・クリスマス」
●ガーディアン・エンジェルズ/きよしこの夜/ホワイト・クリスマス/アヴェ・ヴェルム・コルプス、ほか全14曲
プラシド・ドミンゴ(テノール)
ユージン・コーン(指揮)
チェコ国立響
(ソニー)SICP-4570 2592円
大歌手ドミンゴが多彩なゲストと歌ったクリスマス・ソング集
オペラ界のゴッドファーザー、ドミンゴが歌うクリスマス・ソング。こんなゴージャスなアルバムが他にあるだろうか!1曲ごとにデュオのゲストを迎え、オーケストラと合唱が加わるという豪華版だ。「マイ・クリスマス」と銘打たれたように、ドミンゴが家族と共に長年歌いこんできた曲が集められている。イディナ・メンゼルとのデュオやヘイリーとのデュオも美しい。声がそっくりなドミンゴJrと歌う「ホワイト・クリスマス」を聴けば、一気にクリスマスに突入だ。