新譜CD&DVD vol.4(2013.8)

交響曲・管弦楽曲・協奏曲

岡本稔◎音楽評論家

ストラヴィンスキー:「春の祭典」「ペトルーシュカ」

ダニエレ・ガッティ(指揮)
フランス国立管弦楽団
(ソニー)SICC-30117 2730円

細部の緻密な構築と音楽のエネルギーを発散させた「春の祭典」

「春の祭典」では細部までアンサンブルを緻密に構築するとともに、音楽が持つ大きなエネルギーをありのままに発散させている。初演から100年が経過し、オーケストラのレパートリーの中核的な地位を占めるに至った名作の魅力を余すところなく描き出した秀演といえるだろう。「ペトルーシュカ」も劇的な感覚の横溢した演奏で大いに楽しめる。日本盤のみのボーナス・トラックとして「サーカス・ポルカ」が収められている。

モーツァルト:クラリネット協奏曲、他

モーツァルト:ファゴット協奏曲、フルート協奏曲第2番
クラウディオ・アバド(指揮)
モーツァルト管弦楽団
(ユニバーサル)UCCG-1627 2800円

アバドと名手達がモーツァルトの無垢な音楽の魅力を明らかにする

2006年、09年のライヴ録音。クラリネット協奏曲でソロを吹くのはサンタ・チェチーリア国立アカデミー管の首席をつとめるアレッサンドロ・カルボナーレ。フルートはボストン響の元首席のジャック・ズーン、ファゴットはルツェルン祝祭管の首席をつとめるギヨーム・サンタナという布陣。アバドと選りすぐりの名手たちがモーツァルトの無垢な音楽の魅力を明らかにしている。ヴィブラートを抑制した弦の響きもきわめて印象的である。

器楽・室内楽

伊熊よし子◎音楽ジャーナリスト

「クロイツェル」ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ全集(第2集)

ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第9番
「クロイツェル」/ヴァイオリン・ソナタ第10番
樫本大進(ヴァイオリン)
コンスタンチン・リフシッツ(ピアノ)
(ユニバーサル)TOCE-90243 2500円

個性の違いが生んだ斬新なベートーヴェン

樫本大進とリフシッツによるベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全集第2弾は、「クロイツェル」と第10番の組み合わせ。「クロイツェル」の天に飛翔するような面と深く暗い情熱をふたりは濃密な音の対話でじっくりと聴かせる。特に緩徐楽章のおだやかな歌を奏でる部分は必聴。第10番も親密な対話で、樫本のゆったりとしたおおらかな弦の響きと鋭敏な感性のリフシッツのピアノが融合し、個性の違いが斬新なベートーヴェンを生む。

J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番、
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第9番「クロイツェル」

ブラームス:ハンガリー舞曲集第1番、他
マキシム・ヴェンゲーロフ(ヴァイオリン)
イタマール・ゴラン(ピアノ)
(キングインターナショナル)KKC-5292 1800円

盟友ゴランとともに自由闊達なベートーヴェン

「クロイツェル」といえば、1727年製のストラディヴァリウス「クロイツェル」を使用しているヴェンゲーロフのライヴも聴きごたえ十分。2012年4月5日、ロンドンのウィグモア・ホールにおける演奏で、長年の盟友であるゴランのピアノとともに自由闊達なベートーヴェンを聴かせている。前半のバッハのパルティータ第2番では以前よりも深化し、円熟した静けさに満ちたバッハを奏で、「シャコンヌ」も変奏ごとに幾重にも表現が変容する。

オペラ・声楽

石戸谷結子◎音楽ジャーナリスト

「ベルカント・ドミンゴ」

ジョルダーノ:歌劇「フェドーラ」から《愛さずにはいられぬこの思い》/ヴェルディ:歌劇「アイーダ」から《清きアイーダ》ほか全11曲
プラシド・ドミンゴ(テノール)
ネッロ・サンティ(指揮)
ベルリン・ドイツ・オペラ
(テルデック)WPCS-12605 3200円 ※SACD、再発盤

若さと輝かしい高音がほとばしるデビュー・ソロ・アルバム

1995年に復刻発売されたことがある、ドミンゴにとってはソロでは初アルバムとなる1968年の録音。この年ドミンゴは、コレッリの代役として急遽メトロポリタン歌劇場の舞台に立ち、「アドリアーナ・ルクヴルール」を歌い、大成功を収めている。ちょうど輝かしい国際的キャリアを踏み出した頃の彼の声を聴く貴重な1枚。今回はSACDの仕様で、27歳という若さと輝かしい高音がほとばしるドミンゴの美声を堪能できる。

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