交響曲・管弦楽曲・協奏曲
岡本稔◎音楽評論家
ブラームス:ピアノ協奏曲第1番、第2番
ルドルフ・ブッフビンダー(ピアノ)
ズビン・メータ(指揮)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ソニー)SICC-30285/6(2CD) 3024円
ウィーン伝統のピアニズムを受け継ぐ巨匠の面目躍如たる演奏
2015年のライヴ。ブラームスのピアノ協奏曲2曲を一夜にして演奏するという企画だった。ウィーン伝統のピアニズムを受け継ぐ巨匠といわれるブッフビンダーの面目躍如たる堂々とした音楽だ。ピアノ協奏曲第1番については、ウィーン・フィルの16年の来日でも取り上げられたが、このオーケストラの本拠、楽友協会大ホールでの演奏は、来日公演を上回る白熱した様相を呈している。作品の巨大さ、そこに秘められた情感の豊かさをありのままに表現した秀演である。
死の舞踏~魔物たちの真夜中のパーティ
●デュカス:「魔法使いの弟子」、ドヴォルザーク:「真昼の魔女」、ムソルグスキー~R・コルサコフ編:「はげ山の一夜」、サン=サーンス:「死の舞踏」、アイヴズ:「ハロウィーン」、他
ケント・ナガノ(指揮)
モントリオール交響楽団
(ユニバーサル)UCCD-1444 3024円
ハロウィーンの魔物たちによる真夜中のパーティーを描く作品
2015年10月29、30日のハロウィーンをテーマとした演奏会のライヴ。魔物たちの真夜中のパーティーを描いた作品が集められている。デュカスの交響詩「魔法使いの弟子」、ムソルグスキーの交響詩「はげ山の一夜」、サン=サーンスの「死の舞踏」などといった名曲に、ドヴォルザーク、バラキレフ、アイヴズの珍しい作品が挟まれる。ナガノの解釈は彼らしい几帳面なもので、作品の持ち味を的確に描き出す。オーケストラの水準も高く、気楽に楽しめる一枚だ。
室内楽・器楽
伊熊よし子◎音楽ジャーナリスト
ベートーヴェン:管楽器とピアノのための作品集
●ベートーヴェン:オーボエとクラリネットとバスーンのための三重奏曲/ピアノとフルート、バスーンのための三重奏曲/「ドン・ジョヴァンニ」の「お手をどうぞ」の主題による変奏曲/ホルン・ソナタ/クラリネットとバスーンのための二重奏曲
レ・ヴァン・フランセ
(ワーナー)WPCS-13561 2808円
こだわりの選曲のベートーヴェンはソロも聴きどころ
名手6人の集まり、「レ・ヴァン・フランセ」も来日してしみじみと心に響く絶妙のアンサンブルを披露した。新譜は「いよいよベートーヴェンに挑戦する時期がきた」と全員が判断し、あまり演奏されない作品なども含め、こだわりの選曲となっている。息の合ったアンサンブルも見事だが、各々のソロの部分も聴きどころ。ベートーヴェンの珍しい作品に出合う喜びと新たな発見がいくつもある。これが彼らの目標と夢と未来志向なのかもしれない。
トルコ行進曲~アファナシエフ・ブレイズ・モーツァルト
●モーツァルト:ピアノ・ソナタ第9番/ピアノ・ソナタ第10番/ピアノ・ソナタ第11番「トルコ行進曲付き」
ヴァレリー・アファナシエフ(ピアノ)
(ソニー)SICC-19023 3240円
強い印象をもたらす個性的で特有なテンポのモーツァルト
アファナシエフの録音は、常に作品に寄り添う彼の真 摯 で深い思考が全編を支配しているもので、文筆家でもあるアファナシエフのライナーノーツとともにその世界に浸ることができる。鮮烈な印象をもたらしたベートーヴェンのアルバムに続き、ここに登場したモーツァルトも特有のテンポに彩られ、明快で個性的で心に強い印象をもたらす。聴き慣れた作品とは一線を画し、笑顔の奥に孤独と対 峙 するような表情を見せる複雑な演奏だ。
オペラ&声楽
石戸谷結子◎音楽評論家
ヨナス・カウフマン/「帰れ、ソレントへ」~イタリアの歌
●カルディッロ:「カタリ・カタリ」/クルティス:「忘れな草」/レオンガヴァッロ:「朝の歌」/ダルラ:「カルーソー」ほか全18曲
ヨナス・カウフマン(テノール)
アッシャー・フィッシュ(指揮)
パレルモ・マッシモ歌劇場管
(ソニー)SICC30284 3000円
イタリア大好きの人気テノールが情熱的に歌い上げた来日記念盤
11月末にコンサートで来日予定の人気テノール、カウフマンの来日記念盤。イタリアが大好きという彼が歌うのは、軽快なナポリターナや映画音楽など甘い愛の歌ばかり。低音が充実しバリトンに近い声質だが、どの曲も情熱的に堂々と歌い上げている。曲目ではデル・モナコに捧げられた「こんなにも大きな愛」や、2003年に作曲された「イル・カント」など新しい曲も含まれている。力強く輝かしいカウフマンの声を聴けば元気 溌剌 、気分はすぐにイタリアに飛ぶ。