交響曲・管弦楽曲・協奏曲
岡本稔◎音楽評論家
ブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」
パーヴォ・ヤルヴィ(指揮)
フランクフルト放送交響楽団
(ソニー)SICC-10188
2940円(SACD ハイブリッド)
因習を排して新鮮きわまりないブルックナーを再創造
ヤルヴィは演奏にあたって、「因習的」なアプローチから距離を置くように意識した、という。その結果、生まれた音楽は新鮮極まりないものである。重厚で物々しい、あるいは宗教的な解釈と一線を画したきわめて人間的なブルックナー演奏である。旋律を伸びやかに歌わせ、この作品が持つ自然な味わいを活かした歌心に満ち溢れた音楽はきわめて魅力的だ。オーケストラの細部まで磨き抜かれたアンサンブルも秀逸である。
R.シュトラウス:アルプス交響曲
ダニエル・ハーディング(指揮)
サイトウ・キネン・オーケストラ
(ユニバーサル)UCCD-1380
2800円(SHM-CD)
名手揃いのオーケストラから圧倒的な響きを引き出す
2012年の収録。ハーディングがサイトウ・キネン・オーケストラと初共演した際のライヴである。名手を揃えたヴィルトゥオーゾ・オーケストラの持ち味をいかんなく発揮させ、シュトラウスのオーケストレーションの妙を堪能させてくれる。その圧倒的な響きはきわめて魅力的だ。小澤が指揮した際の室内楽を大きくしたような一体感に代わって、楽員の間にはある種の緊張感が際立ち、それが音楽に好ましい影響をもたらしている。
器楽・室内楽
伊熊よし子◎音楽ジャーナリスト
ミロシュ~ラテンの哀愁
●ピアソラ:リベルタンゴ●ベン:マシュ・ケ・ナダ●ベラスケス:ベサメ・ムーチョ●カルロス・ジョビン:イパネマの娘●マンサネーロ:ソモス・ノビオス~愛の夢、他
ミロシュ(ギター)
(ユニバーサル)UCCG-9995
3500円(DVD付き)
哀愁と静寂と平穏を感じさせるラテン・アルバム
ミロシュの待望の第2弾はピアソラ、ガルデル、ブローウェル、ヴィラ=ロボスなどの南米を中心とした曲を集めたラテン・アルバム。ミロシュの演奏は哀愁と静寂と平穏を感じさせ、けっして熱すぎず、雄弁すぎない。作品に込められた深い感情に寄り添うよう、ゆったりと自然な歌を奏でていく。特にバリオスの「最後のトレモロ」のえもいわれぬ悲しさを秘めた響きに、心が奪われてしまう。ギター好きにはたまらない密度濃い選曲だ。
オペラ・声楽
石戸谷結子◎音楽ジャーナリスト
ヴェルディ:歌劇「リゴレット」
レオ・ヌッチ(リゴレット)
ニーノ・マチャイゼ(ジルダ)
フランチェスコ・デムーロ(マントヴァ公爵)ほか
マッシモ・サネッティ(指揮)
パルマ王立歌劇場管弦楽団&合唱団
ステファノ・ヴィジオーリ(演出)
(キング)KIXM-116 5250円
※ ブルーレイ、日本語字幕付き
白熱した歌唱、オーソドックスな演出、カラフルで豪華な衣装
ヴェルディの全26オペラを、パルマ歌劇場を中心に収録した全集の分売がスタートした。「リゴレット」は2008年パルマでのライヴ。主役のヌッチはまさにこの役の第一人者。マチャイゼとデムーロの若手コンビも素晴らしく、見応え聴き応えある映像となった。ヴィジオーリの演出はオーソドックスで安心して見られる。特にカラフルでゴージャスな衣装が目を引く。2幕の父娘の二重唱は白熱した歌唱で、カーテンコールで再度歌われるほど喝采を受けた。
輸入盤
鈴木淳史◎音楽評論家
リヒャルト・シュトラウス:交響詩「英雄の生涯」
●リヒャルト・シュトラウス:交響詩「死と浄化」
クリスティアン・オステルターク(ヴァイオリン)
フランソワ=グザヴィエ・ロト(指揮)
バーデン=バーデン&フライブルクSWR交響楽団
(Hänssler)93299 オープン価格
すでに大人びた風格が宿るロトの演奏
ロトと南西ドイツ放送響との第2弾。7歳年下にあたるネルソンスとバーミンガム市響盤は、そのオペラティックな表情変化がいかにも若者らしい解釈だったが、ロトの演奏にはどっしりと構えた大人びた風格が宿る。「英雄の伴侶」では耽美的なアンサンブルでゆったりと歌い、「戦い」では生々しい表情をうかがわせながらもガッチリと構成された響きを聴かせてくれる。途中でパウゼを設けた後、打楽器群が一糸乱れずなだれ込む箇所は見事。