交響曲・管弦楽曲・協奏曲
岡本稔◎音楽評論家
ブルックナー:交響曲第3番
●ワーグナー:歌劇「タンホイザー」序曲
アンドリス・ネルソンス(指揮)
ライプチヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
(ユニバーサル)UCCG-1766 3024円
オーケストラの響きを大切に瑞々しい感性を反映
2017年にライブチヒ・ゲヴァントハウス管のカペルマイスターに就任したネルソンスが、それに先立つ16年のコンサートで取り上げた演奏。この組み合わせによる初録音であるとともに、ブルックナー交響曲全集のスタートとなるという。オーケストラの持ち味である含蓄に富んだ響きを最大限に活かしながら、若く 瑞々しい感性が反映されたネルソンスならではの解釈を聴かせている。ワーグナーでもその個性はいかんなく発揮されている。
室内楽・器楽
伊熊よし子◎音楽ジャーナリスト
シューベルト:ピアノ・ソナタ第21番、12のドイツ舞曲(レントラー)、他
●シューベルト:アレグレット ハ短調
ダン・タイ・ソン(ピアノ)
(ビクター)VICC-60945 3240円
シューベルトによく合うおだやかで清涼な響き
ダン・タイ・ソンの美質であるおだやかで清涼な響きは、シューベルトの作品によく合う。ピアノ・ソナタ第21番をメインに据えた新譜は、冒頭のソナタの第1楽章から、特有の遅めのテンポが聴き手をシューベルトの世界へとゆっくりといざなっていく。各音の歌心を大切に慈しむように紡いでいく奏法は、シューベルトの静 謐で深遠な表情を浮かび上がらせ、その奥に孤独感と諦念を潜ませている。特に緩徐楽章の美しさが格別である。
ベル・カント~ヴィオラの声 ヴュータン、ドニゼッティ、ベッリーニ、ほか
●ヴュータン:ピアノとヴィオラのためのソナタ変ロ長調●ドニゼッティ:歌劇「連隊の娘」よりマリーのアリア「さようなら」●ジャック=フェロル・マザ:夢~ドニゼッティのラ・ファヴォリータに基づくエレジー、他
アントワーヌ・タメスティ(ヴィオラ)
セドリック・ティベルギアン(ピアノ)
(キングインターナショナル)KKC-5761 3240円
弦を豊かに歌わせヴィオラの素晴らしさを披露
数多くの権威ある国際コンクールで優勝に輝き、いまやヴィオラ界になくてはならない存在となったアントワーヌ・タメスティが、弦を豊かに歌わせる作品を選んでヴィオラの素晴らしさを披露している。オペラから無伴奏作品まで多岐にわたる選曲で、ミステリアスで深々と響く低音を遺憾なく発揮。ピアノのティベルギアンがこれに呼応し、ヴィオラと融合した歌を奏でる。1672年製ストラディヴァリの芳 醇で詩情あふれる響きが心に響く。
オペラ&声楽
石戸谷結子◎音楽評論家
J・S・バッハ:「ヨハネ受難曲」BWV245
ローター・オディニウス(福音史家)
クリスティアン・イムラー(イエス)、ほか
マルク・ミンコフスキ(指揮)
ルーヴル宮音楽隊
(ワーナー)WPCS-13678/9 3780円
※Erato原盤
ミンコフスキ独自の視点を取り入れて挑んだバッハの受難曲
満を持して「ヨハネ受難曲」に取り組んだミンコフスキ。彼ならではの独自の視点が取り入れられている。曲の初演は1724年だが、晩年まで数度の改訂が加えられた。今回は初演版に基づきつつも、1部の最後に1725年版のバスとテノールのアリアが加えられ、1749年版で用いられたチェンバロやコントラファゴットも使われた。合唱は8人のソリストに福音史家を加えた構成。速めのテンポでイエスの悲劇を紡いでいき、2部のイエスの死の場面はドラマチックだ。
幸田浩子「マイ・ベスト・セレクション」
●モーツァルト:モテット「踊れ、喜べ、幸いなる魂よ」より
アレルヤ/管野よう子:「花は咲く」、ほか全15曲
幸田浩子(ソプラノ)
ヤクブ・フルシャ(指揮)
プラハ・フィルハーモニア、ほか
(コロムビア)COCQ-85361 2700円
日本を代表するコロラトゥーラ・ソプラノ、幸田浩子のベスト盤
日本を代表するコロラトゥーラ・ソプラノ、幸田浩子。これまで10年間にリリースした7枚のCDから、自ら選んだ15曲を収録した1枚。「私は夢に生きたい」(ジュリエッタのワルツ)やモーツァルトの「アレルヤ」などをはじめ、お得意のオペレッタなど軽やかなアリア、それに日本語の歌曲やポピュラー曲までが収められている。やわらかく、澄んだ温かい音色を持つ幸田浩子の美しい声を満喫できるアルバム。「アメイジング・グレイス」は華やかな編曲が楽しい。