交響曲・管弦楽曲・協奏曲
岡本稔◎音楽評論家
ベートーヴェン:交響曲第1番、第6番「田園」
朝比奈隆(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団
(フォンテック)FOCD-9768 2700円
《録音:1997年&98年 サントリーホール》
枯淡に傾くことなく朝比奈ならではの高い風格
朝比奈隆は10回以上ベートーヴェンの交響曲全曲演奏を行い、すでに7種の録音が市場に出ているという。8番目のリリースは1997年と98年に新日本フィルを指揮したもの。老境に達しながらも過度に枯淡に傾くことなく、堂々たるイン・テンポで進められる。その風格の高さは朝比奈ならでは。時に垣間見せる情熱が音楽を表情豊かなものにしている。オーケストラは大阪フィルに次いで共演機会の多い団体らしく、指揮の行間を読む演奏を展開。
ウィーン・フィル
ニューイヤー・コンサート2018
●J.シュトラウス2世:「南国のバラ」、「ミルテの花」、「都会と田舎」●J.シュトラウス1世:「マリアのワルツ」、「ウィリアム・テル・ギャロップ」●ヨーゼフ・シュトラウス:「ウィーンのフレスコ画」●スッペ:「ボッカチオ」序曲、他
リッカルド・ムーティ(指揮)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ソニー)SICC-2151/2 3132円
ムーティの生気に満ちた鮮やかなタクトさばき
恒例となったスピード・リリース。ムーティはニューイヤーには5回目の登板となる。巨匠と呼ぶにふさわしい風格を備えてきた彼だが、生気に満ちた鮮やかなタクトさばきは健在だ。そこから生まれる音楽は千変万化の表情をたたえる。かつてのこの団体によるウィーン音楽のやや鄙びた味は現代的にリフレッシュされているが、そこに新鮮で深い味わいが加わっているのが特徴的。この演奏会で初めて取り上げられる7曲もそれぞれの魅力を持つ。
室内楽・器楽
伊熊よし子◎音楽ジャーナリスト
ストラヴィンスキー:春の祭典(2台ピアノ版)、2台のピアノのための協奏曲、他
●ストラヴィンスキー:マドリード/タンゴ/サーカス・ポルカ
マルク=アンドレ・アムラン(ピアノ)
レイフ・オヴェ・アンスネス(ピアノ)
(Hyperion)CDA-68189 オープン価格
2台ピアノによる「春の祭典」は聴き手の脳を覚醒させる
カナダとノルウェー出身の名ピアニスト、アムランとアンスネスが組んだストラヴィンスキーは、スリリングかつ夢と幻想と実験的な空気をただよわせる。「春の祭典」は、ふたりの刺激的な打鍵と響きが聴き手の脳を覚醒させる。「2台のピアノのための協奏曲」は2台が同等の対話を繰り広げる。あまり演奏されない「マドリード」「タンゴ」「サーカス・ポルカ」など貴重な作品も収録され、ストラヴィンスキーのピアノ作品の奥深さを知る思いだ。
ナゼルの夜会 2017
●スクリャービン:ワルツ変イ長調●プーランク:ナゼルの夜会●シューマン:謝肉祭
斎藤雅広(ピアノ)
(ナミ・レコード)WWCC-7859 2700円
デビュー40周年記念アルバムは粋で洒脱な舞踊の空気
斎藤雅広がデビュー40周年を迎え、記念アルバムをリリースした。まず、スクリャービンのはなやかで典雅な「ワルツ」で幕開けし、プーランクの「ナゼルの夜会」につなげる。この作品は友人たちを素材とした8つの変奏曲からなり、斎藤雅広は各曲を個性あふれる人物像を描き出すように表情豊かに演奏。シューマンの「謝肉祭」もさまざまな人物が描かれ、芝居の登場人物のように生き生きと奏でられる。全編に粋で洒脱な舞踊の空気がただよう。
オペラ&声楽
石戸谷結子◎音楽評論家
永遠のオペラ・デュエット集~マリア・カラス&ジュゼッペ・ディ・ステファノ
●ベッリーニ:歌劇「清教徒」よりエルヴィーラとアルトゥーロの二重唱「ああ、終わったわ~あなたを見つめて~わたしの腕の中に」、他全8曲
マリア・カラス(ソプラノ)
ジュゼッペ・ディ・ステファノ(テノール)
トゥリオ・セラフィン(指揮)
ミラノ・スカラ座管、他
(ワーナー)WPCS-13742 2700円 ※EMI原盤
カラスと公私で近かった名テノール、彼ら2人によるデュエット集
なんと懐かしい伝説のディスク! 初めてLPで発売された時の感動を覚えている。
1953年から57年、2人の全盛期の録音から2重唱を抜き出して編集されたアルバムが、リマスター音源で 甦った。「清教徒」二重唱のステファノの輝かしい高音、「仮面舞踏会」の熱い二重唱、「トスカ」の3幕のドラマチックな演奏と、挙げればキリがない素晴らしい愛の場面が集められている。ジャケットは最後の恋人といわれたステファノとのツー・ショット。カラスの優しい表情が印象的だ。