交響曲・管弦楽曲・協奏曲
音楽評論家 岡本稔
ブルックナー:交響曲全集
小澤征爾(1番)、パーヴォ・ヤルヴィ(2番)、
ヘルベルト・ ブロムシュテット(3番)、ベルナルド・ハイティンク(4、5番)、
マリス・ヤンソンス(6番)、クリスティアン・ティーレマン(7番)、
ズービン・メータ(8番)、サイモン・ラトル(9番)
ベルリン・フィル
(キングインターナショナル)KKC-9507/19 19800円
ベルリン・フィルを指揮して巨匠たちが自らの個性を遺憾なく発揮
2009年から19年にかけて、ベルリン・フィルを指揮した8人の大物によるブルックナー交響曲全集。ハイティンクの第4番、第5番、ヤンソンスの第6番、ティーレマンの第7番、メータの 第8番、ラトルの第9番(4楽章版)など、いずれも巨匠たちが自らの個性を遺憾なく発揮し、有無を言わさぬ説得力をもつ名演を実現。第1番を担当したのは小澤征爾。ブルックナーにはあまり縁がない印象もある小澤だが、予想を覆す清新な作品像を提示している。
モーツァルト:交響曲第28番、ピアノ協奏曲第27番、
ブラームス:交響曲第2番
エミール・ギレリス(ピアノ)、カール・ベーム指揮
ベルリン・フィル
(キングインターナショナル)KKCー6069/70
※TESTAMENT原盤
ベーム晩年の味わい深い演奏とは趣を異にする白熱のライヴ
1970年のザルツブルク音楽祭ライヴ。ベームのブラームスといえば、晩年のウィーン・フィルとの味わい深い演奏が思い起こされるが、この演奏は趣をかなり異にする。生演奏ならではの白熱した演奏で、圧倒的な高揚を作り上げている。
ギレリスとのモーツァルト最後のピアノ協奏曲も一期一会の至高の音楽といえるだろう。このピアニストが日本で過小評価気味であることが実感される。第28番の交響曲も機能をいかしながらも、典雅な味を醸したもの。
オペラ&声楽
石戸谷結子◎音楽評論家
ブラームス:「ドイツ・レクイエム」
クリスティアーネ・カルク(ソプラノ)、マティアス・ゲルネ(バリトン)
ダニエル・ハーディング(指揮)スウェーデン放送響&合唱団
(キングインターナショナル)KKC-6067 3300円
※輸入盤、harmoniamundi原盤、日本語解説・歌詞付き
ゆったりとして荘厳、静謐な雰囲気たたえたブラームスの宗教曲
マルチン・ルターが訳したドイツ語の旧約聖書と新約聖書からテキストが採られている「ドイツ・レクイエム」。「人はみな草のごとく」や、「この地上に永遠の都はない」など、良く知られた詞に付けられたブラームスの崇高な曲だ。
ハーディングの指揮はゆったりとして荘厳、静謐な雰囲気をたたえている。ソリストのゲルネは、
やわらかく深い声、ソプラノのカルクも澄んで美しい響き。
スェーデン放送合唱団の合唱も清澄で、全体をバランス良くまとめたハーディングの力だ。
現代曲
長木誠司
「自分の声を見つける」
ヴァインベルク生誕100年記念ドキュメンタリー&演奏
●ヴァインベルク:24の前奏曲
(Accentus Music)KKC―9481(DVD) 4400円
ソ連時代に迫害された作曲家ヴァインベルク
ギドン・クレーメルのドキュメンタリー映像で、その生まれから演奏家としてのソ連、およびその後の国際的な活動が、ペルトや家族の姿を交えて興味尽きないエピソードや映像とともに綴られるが、もうひとつのテーマになっているのはソ連時代に迫害されたユダヤ人作曲家ヴァインベルクのこと。昨年生誕100年を迎えてクレーメルが集中的に採り上げた作曲家だが、その《24の前奏曲》のモスクワでのライヴも収められている。必携盤。
輸入盤
音楽評論家 鈴木淳史
ブルックナー:交響曲第6番
(ベンヤミン=グンナー・コールス版2015年)
サイモン・ラトル(指揮),ロンドン交響楽団
(Lso Live)LSO0842 オープン価格
柔らかく、しなやかで、自由なラトルのブルックナー
ベルリン・フィルの軛から解放されたラトルの絶好調が続いている。くっきりとしたアーテキュレーションの口調のまま、明瞭かつ柔らかに重ねられる声部。あえてブロック構造を意識させない、しなやかな繋ぎと滔々とした流れ。第2楽章第2主題では後半になるとフルトヴェングラーかというくらいに歌わせる。そんな自由さのなかにも、終楽章展開部の鮮やかな楽器の出し入れや、対位的な処理など、遣り手ラトルの手腕が発揮されている。