vol.1 ヴァイオリン 鈴木理恵子、ピアノ 若林 顕
ブラームスのヴァイオリン・ソナタ全曲を録音
鈴木「デリケートな情緒と秘められたエネルギー」
若林「何回聴いても新しいものを発見してもらえる」
それぞれソロで活躍している2人が、待望のデュオCDを初リリースした。ブラームスのヴァイオリン・ソナタ全集で、息の合った音楽を聴かせている。
「最初にブラームスを録音しようと思いました。若林さんのピアノはとてもシンフォニックです。ヴァイオリンとピアノが拮抗するというより融合していくように、その色彩の中に解け合うように演奏したいと思いました。ブラームスはデリケートな情緒がありますし、秘められたエネルギーを持っています」と鈴木は話す。
若林は「ブラームスのにじみ出るような和音の美しさ、さまざまなデリケートな美しさに焦点を当てました。ピアノが担わされている役割は大きいのです。重い沈む音になってしまうとヴァイオリンと融合しにくいのです。何回聴いても新しいものを発見してもらえるようなものにしたかった」と話す。
「雨の歌」と称される第1番のソナタは1879年に完成した。クララ・シューマンが好きだった歌曲「雨の歌」が引用されている。慎重なブラームスらしく、その7年後にようやく第2番が完成。続けてより内省的な第3番が作曲された。
「1番は全般的に敬虔(ルビ:けいけん)な感じがあります。過去のいろいろなことを思い出しているような。2番はストレートに情緒が歌われますが、根底に寂しさや辛さがあります。3番は威圧するような打音ではヴァイオリンと対決してしまうので、うねりみたいなものを出していくようにしました」と若林は解説する。また鈴木は「昔は3番が激しすぎて好きではありませんでした。1番から3番までそれぞれキャラクターが違い、今はどれも素晴らしいと思います」と話す。
録音は昨年10月、群馬県のホールで3日間行われた。ライヴ的に録音してもらったという。
「若林さんのピアノに包み込まれるようで、逆に自由に演奏できました。基本形はあるのですが、若林さんは引き出しが多いので、毎回リハーサルのたびに音楽が変わっていきます」と鈴木はレコーディングの様子を話した。
CDリリース記念のデュオ・リサイタルが4月に行われる。ブラームスの「雨の歌」に加えてベートーヴェン、バルトーク、ピアソラとバラエティーに富んだプログラム。
「ピアソラの『グランタンゴ』からブラームスに不思議と着地するところがあります。ピアソラはチャレンジです。またベートーヴェンに帰ってきたときに表現の幅が広がるのではないかと思います」と若林は話した。
Rieko Suzuki
桐朋学園大学卒。23歳で新日本フィル副コンサートミストレスに就任。篠崎功子、ギンゴールドに師事。2004年より読売日本交響楽団の客員コンサートマスターを務めている。08年、横浜美術館で「ビヨンド・ザ・ボーダー音楽祭」をプロデュース。14年にも横浜みなとみらいホールにて4回目の開催予定。
Akira Wakabayashi
東京芸術大学、ザルツブルク・モーツァルテウム、ベルリン芸術大学で学ぶ。田村宏、ハンス・ライグラフに師事。ブゾーニ国際コンクール2位。エリザベート王妃国際コンクール2位。2007年、「ヴィルトゥオーゾ・プログラムによる3連続演奏会」を開催。桐朋学園大大学院教授。
■リサイタル
鈴木理恵子&若林顕デュオ・リサイタル
4月13日(土)14:00 浜離宮朝日ホール
ベートーヴェン:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第8番
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第1番「雨の歌」、他
■問い合わせ:コンサートイマジン (電話)03-3235-3777
■CD
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ全集
第1番「雨の歌」/第2番/第3番
(キングインターナショナル)KKC-034