おすすめアーティスト vol.109 チェロ 上村文乃

vol.109 チェロ 上村文乃

9月14日にHakuju Hallでリサイタル
シュニトケとスカルラッティを交互に演奏
「目に入った曲をメーンと思って来て下さい」

 昨年、7年間の留学を終え、帰国した若手チェリスト。9月に行うリサイタルのプログラムがユニークで新しい。日本の演奏会では、なかなか聴くことできない構成で、しっかりと上村の意思が入っている。バロック・古典と現代作品を並べるのもそうだが、前半は、旧ソ連の作曲家シュニトケとイタリア・バロックのアレッサンドロ・スカルラッティの作品を1楽章ずつ交互に演奏する。後半は、難曲ベリオの作品に武満徹、最後にベートーヴェンの「春」。
 「シュニトケを弾いてみたかったのです。シュニトケを始めとする19世紀末―20世紀初頭は古典を取り入れて再構築する作風が流行しました。シュニトケはピアノ伴奏で、スカルラッティはオリジナル譜を元に私自身が再構築し村井智さんのチェロ伴奏となります。シュニトケはスカルラッティから影響を受けており、モダンなのかバロックなのかわからないところがすごく面白い。こういう演奏の仕方で2つの作品にある300年の時を埋められます。どちらを演奏しているかわからなくなるような奇妙な瞬間があると思います」

 シュニトケ、ベートーヴェンはヴァイオリンのために書かれた。
 「『春』をチェロで弾くのは恐らく日本で初めてではないでしょうか。名曲はどの楽器でも素晴らしいということを表現したいです。ベリオは昔からあこがれていました」
 もともとはモダン楽器の奏者だったが、クリストフ・コワンにバロック・チェロを師事、古楽オーケストラのバッハ・コレギウム・ジャパンでもチェロを演奏している。
 「古楽は苦手だったのです。古楽器をしている友人と話していて、楽譜の読み方から違う。自分の中途半端な知識がすごく不安になりました。今勉強しなければ後悔すると思い、バーゼル音楽院の最後の2年間に古楽を習いました。興味をかれると追求してしまうタイプなのです」
 シュニトケや武満など現代曲といっても決して難しくない。「どの作品もメーンになる」と話す。
 「確かにオーソドックスなプログラムではありません。ベートーヴェンを聴きにきてもらってもいいし、バロック、現代曲でもよいのです。人によって音楽の聴き方は違います。自分の目に入った曲をメーンにしてください。固定観念でカテゴライズする必要はありません。音楽はそんなにかしこまって聴く必要はないのです」

Ayano Kamimura

第4回ルーマニア国際音楽コンクール第1位。第80回日本音楽コンクール第2位。2015年トレヴィーゾ市国際音楽コンクール第1位。桐朋学園大学ソリストディプロマコース卒業後ハンブルク音楽演劇大学を経てバーゼル音楽院に留学。2020年に7年間の留学生活を終え帰国。オーケストラとの共演や国内外での室内楽での演奏も高く評価されている。トリパルティ・トリオ(ヴァイオリン・米元響子、ピアノ・菊池洋子)やバッハ・コレギウム・ジャパンのメンバーとしても活躍中。

ここで聴く

上村文乃 チェロ・リサイタル

9月14日(火) 19:00 Hakuju Hall

シュニトケ:ヴァイオリンとピアノのための古い様式による組曲(チェロ版)
スカルラッティ(上村⽂乃編):チェロ・ソナタ 第2番
※楽章毎にシュニトケ(全5曲)とスカルラッティ(4楽章)を交互に演奏
ベリオ:セクエンツァ XIV
武満徹:オリオン(チェロとピアノのための)
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 第5番「春」(チェロ版)

問い合わせ:シャパン・アーツぴあ TEL:0570-00-1212

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