vol.110 オルガン 中田恵子
神奈川県民ホールのオルガン・アドバイザー
フランスと日本の作品で就任記念リサイタル
「オルガンとの出会いの場所になればいい」
オルガニストの中田恵子が今年4月、神奈川県民ホールのオルガン・アドバイザーに就任、その記念リサイタルが10月、同ホール小ホールで行われる。
中田とオルガンの出会いは東京女子大学のチャペルのオルガンだった。東京芸術大学に入り直し、パリに留学した。神奈川県民ホールのオルガンはドイツのクライス社製で、日本の公共ホールに初めて設置された。実は東京芸大の練習室にも同じクライス社のオルガンがある。
「楽器は1台として同じものはなく、置かれている空間も違いますが、旧友に会えたような懐かしさを感じました。オルガン・アドバイザーの仕事は、主にオルガンに関する企画に対する助言、コンサートの出演、またオルガンを弾きこみ、調子が悪いところがないかをチェックするという役割も含まれています」
オルガンはキリスト教の教会の楽器として欠かせない。ブルックナーなど敬虔な作曲家が教会のオルガニストを務め、オルガン曲を作曲してきた。
「キリスト教の中で育まれたオルガン文化ですが、教会の歴史が浅い日本においては、ホールの中でオルガン文化が発展していく、というヨーロッパとは違った側面もあります。神奈川県民ホールの小ホールは433席で、舞台上のオルガンとお客様の距離が比較的近いのも特徴的です。オルガンというと大きく仰々しい楽器で、遠い存在のように思う方もいらっしゃるかもしれませんが、音色もまろやかで、親しみを持てます。県民ホールが皆様とオルガンとの出会いの場所になればいいな、と思います」
プログラムにあるグリニーは、若くして亡くなったフランス古典の作曲家で、バッハも高く評価していた。そしてバッハの「アリア BWV587」と「幻想曲 BWV562」。ボエルマンはフランスの19世紀の作曲家で、パリの教会でオルガニストを務めた。デュリュフレは20世紀の作曲家。「前奏曲、アダージョと『来たれ創り主なる聖霊』によるコラール変奏曲」は1930年に初演された。日本人作曲家の作品も2曲。鈴木純明には新作を委嘱し、先ごろ亡くなった尾高惇忠はパリで学んでいる。
「楽器はドイツ製ですし、フランスものを弾くのに適しているとは言えないのですが、今回は挑戦するつもりでプログラムを組みました。同時にフランスから影響を受けた日本の作曲家作品も入れたいと思いました。フランスの大聖堂で響くオルガンとは違うけれど、県民ホールから発信するフランス音楽と日本との融合を楽しんでいただけたら、と思います」
Keiko Nakata
東京女子大学文理学部社会学科卒業後、東京藝術大学音楽学部器楽科オルガン専攻卒業。同大学院修士課程修了。修士論文では J.S. バッハ《トッカータ ハ長調》をめぐる演奏解釈を論じ、日本オルガニスト協会年報誌に掲載される。パリ地方音楽院の演奏家課程を最優秀の成績で修了。第11回アンドレ・マルシャル国際オルガンコンクール優勝。キリスト教音楽院講師、国際キリスト教団代々木教会パイプオルガンクラス講師、玉川聖学院オルガニスト、日本基督教団鎌倉雪ノ下教会オルガニスト。2019年、デビューCD「Joy of Bach」をリリース。
神奈川県民ホール オルガン・アドバイザー就任記念!
中田恵子 オルガン・リサイタル
フランス×日本 時空を越えて
10月9日(土)15:00 小ホール
グリニー:アヴェ・マリス・ステラ
J.S.バッハ:アリア/幻想曲
メルニエ:インヴェンション 2
ボエルマン:「ゴシック風組曲 作品25」より「聖母への祈り」
鈴木純明:パンジェ・リングァに基づくリチェルカーレ
(神奈川県民ホール委嘱作品/初演)
尾高惇忠:オルガンのためのエッセイ
デュリュフレ:前奏曲、アダージョと「来たれ創り主なる聖霊」によるコラール変奏曲
聖歌:青木洋也(カウンターテナー)
■問い合わせ:チケットかながわ TEL:0570-015-415