vol.118 長谷川陽子 チェロ
5月にデビュー35周年記念のリサイタル
ベートーヴェンのチェロ・ソナタ全曲を演奏
「35年間やってこられて感謝しかありません」
日本を代表するチェリストの一人、長谷川陽子がデビュー35周年を迎えた。5月19日の記念リサイタルで、ベートーヴェンのチェロ・ソナタ全曲を演奏する。
「15歳のとき、日本音楽コンクールで2位に入りました。17歳でデビュー・リサイタルを行い、それから35年です。ここからビクターでCDを出しませんか、日本フィルと協奏曲の共演をしませんか、といろいろな仕事が広がっていきました」と35年前を振り返る。
桐朋学園の「子供のための音楽教室」で井上頼豊に師事し、桐朋学園大に入学するも、半年でフィンランドのシベリウス・アカデミーに留学した。
「9歳から井上頼豊先生につきました。最初は偉大な先生で緊張しまくって声が出ませんでした。でも私のころは優しいおじい様になっていました。この曲は山崎伸子さんに教わってきなさい、などといろいろな先生に教わるように言ってくれました。17歳でデビューしましたが、まだまだ勉強しなくちゃ、と留学しました。井上先生にも相談しました」と師の思い出を話す。
今でこそ女性のチェリストは増えたが、長谷川の時代はまだ、女性がチェロを弾くことに抵抗があった時代だった。
「父がヴァイオリンを弾いていて、母がピアノを弾いていました。いつかトリオを組めたらいい、と思っていました。チェロの音色はすごく疲れたときに聴いてもすっと心に入ってきます。表現の幅が広いのです。チェロは木でできていますから木のぬくもりのような温かい音がします」
記念リサイタルで取り上げるベートーヴェンのチェロ・ソナタは、チェリストにとって「新約聖書」と言われる大切なレパートリー。
「チェロ・ソナタ第3番はシベリウス・アカデミーのアルト・ノラス先生のもとで勉強しました。最初の音を出したとたんに、それは違う、とおっしゃられて、半年間、ワンフレーズだけを練習しました。1曲仕上げるのに1年かかりました。それ以来、この演奏でいいのか、と考え続けています」
一昨年からのコロナ禍で仕事がなくなり、落ち込むこともあった。5月にはこのチェロ・ソナタ全曲のCDもリリースされる。
「私にはやっぱり音楽しかない、と気づかされたのはベートーヴェンでした。これまでにも録音のお話がありましたが、断っていました。40歳を過ぎてようやく見えてきたのです。35年間チェロを弾かせてもらい、感謝しかありません」
Yoko Hasegawa
色彩豊かな音色と音楽性を持ち合わせた、日本を代表するチェロ奏者の一人。
東京都生まれ。井上頼豊に師事し、15歳で第54回日本音楽コンクール第2位。桐朋学園大からフィンランドのシベリウス・アカデミーに留学、首席で卒業。国内外の主要オーケストラとの共演、リサイタル、室内楽、朗読との共演など活動は多岐にわたる。ロストロポーヴィチ国際チェロ・コンクール特別賞、新日鉄フレッシュ・アーティスト賞、第9 回齋藤秀雄メモリアル基金賞等、受賞多数。桐朋学園大学音楽学部准教授。ホームページ http://yoko-hasegawa.com/
コンサート
デビュー35周年記念
長谷川陽子 チェロ・リサイタル
5月19日(木) 19:00 東京文化会館 小ホール
ベートーヴェン:チェロ・ソナタ全曲 第1~5番
松本和将(ピアノ)
問い合わせ:ジャパン・アーツぴあ TEL:0570-00-1212
CD
長谷川陽子
ベートーヴェン:チェロ・ソナタ(全曲)
(日本アコースティックレコーズ)
NARD-5079/80(2枚組)5月25日発売予定