おすすめアーティスト vol.36 ピアノ クリスチャン・レオッタ

vol.36 ピアノ クリスチャン・レオッタ

ベートーヴェンのピアノ・ソナタを全曲演奏
京都府立府民ホール“アルティ”で12月と来年
「音楽によってのみ辿り着ける崇高な世界」

 イタリアのピアニスト、クリスチャン・レオッタがベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲演奏を12月と来年4、5月の2回に分けて行う。今回で全曲演奏は20回になるというベートーヴェンのスペシャリスト。「ピアノ・ソナタ全曲は『巨大な宇宙』」と話す。

── バッハの平均律クラヴィーア曲集が旧約聖書、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲が新約聖書にたとえられています。
ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲は、すべての時代において書かれた作品の中でもっとも重要な集大成です。それらは文字通り音楽の歴史を変えました。1793年から1822年にかけて、ベートーヴェンは彼自身の人生と、飽くなき「絶対」への探求をその制作に費やしました。曲の着想は2度繰り返されることはなく、それぞれのピアノ・ソナタは独立しています。ピアノ・ソナタ全曲は「巨大な宇宙」であって、音楽によってのみ辿たどり着くことのできる崇高な世界を何よりも巧みに表現しています。

── 昨年の記者会見でベートーヴェンのピアノ・ソナタを弾くことはダンテの「神曲」を紐解くことに近いと言われました。
ダンテの傑作である「神曲」は、地獄での究極の苦しみから天国での崇高な喜びまで、人の感情のすべてを表現しながら、死者の魂が「地獄」、「煉獄れんごく」、そして「天国」をめぐる話を伝えていますが、ベートーヴェンの音楽はダンテ同様の尋常ならざる強い精神で、人の感情のすべてについて語っています。彼は、難聴により自殺を考えるほど苦しみましたが、それと同時に、困難に打ち勝ち、前に進む強さと勇気を彼自身の芸術により与えられ、崇高と真の喜びに達することができました。彼の音楽では、「正義」がいつも「悪」に勝つのです。

── ベートーヴェンへの共感は何歳の時に芽生えましたか? 
ベートーヴェンの交響曲とピアノ・ソナタを聴き始めたのは私が7歳の時です。聴いてすぐに恋に落ちました! ベートーヴェンのピアノ曲は他のどのピアノ曲よりも「オーケストラ」的な音楽なのです。それが、私が彼のピアノ曲を愛するもうひとつの理由でもあります。ベートーヴェンの音楽は知性と心の完全なる融合を表しています。彼のメッセージは素晴らしく、そして普遍的なもので、それは人類への素晴らしい贈り物なのです。

── 曲順はどのように決められましたか? 今回2回弾く曲があります。
毎回少なくとも1曲は名前付きのもの、そして1曲は単独で発表されたもの(第4、11、12番など)、そして、他のソナタと一緒に発表されたもの(第1、2、3番など)をそれぞれ入れようと決めていました。さらに、ベートーヴェンがどのようにスタイルを発展させていったのかが分かるような構成にも配慮しました。調性も重要です。出来る限り長調と短調で書かれた曲をバランスよく選曲するようにもしています。
「月光」、「熱情」、「ハンマークラヴィーア」、 第31番をそれぞれ2度演奏するのは初めてです。9月の演奏と12月の演奏とでは確実に変化すると思います。演奏会の期間に京都で感じる素晴らしい感情を吸収し、私の心と演奏をさらに豊かにすることでしょう。

Christian Leotta

カターニア生まれ。7歳よりピアノを始める。ヴェルディ音楽院のマリオ・パトゥッツィに師事。2002年にはモントリオールにて、わずか22歳でベートーヴェンのピアノ・ソナタ全32曲を披露するという偉業を成し遂げた。以後、ピアノ・ソナタ全32曲演奏を欧米の主要都市で披露。この芸術活動により04年、イタリア共和国大統領より功労賞を授けられる。2015年は、アルジェリア、タイ、京都、ベルガモ、メッシーナなどでベートーヴェン・ピアノ・ソナタ全曲演奏会を開催。16年には、ディアベッリ変奏曲を含む新しいCDが発売される。

ここで聴く

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全曲演奏会
京都府立府民ホール“アルティ”

1st stage
12月5日 (土) 14:00
第10番、第3番、第30番、第23番「熱情」
12月9日 (水) 19:00  第17番「テンペスト」、
第13番、第19番、第29番「ハンマークラヴィーア」
12月12日 (土) 14:00 
第1番、第14番「月光」、第25番、第28番
12月20日 (日) 14:00 
第6番、第15番「田園」、第22番、第31番
※12月13日(日)14:00、ワークショップとマスタークラス開催
2st stage
2016年4月29日(金・祝)~5月15日(日)
■問い合わせ:電話075-441-1414

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