vol.42 指揮 キンボー・イシイ
佼成ウインドで「トゥーランドット」を指揮
「最初は半信半疑でした。話が進み、
運命だと思い、お引き受けしました」
ドイツのマグデブルク劇場の音楽総監督を務めるキンボー・イシイが、東京佼成ウインドオーケストラを初めて指揮する。それもプッチーニのオペラ「トゥーランドット」の抜粋。「運命だと思ってお引き受けしました」と話す。
──ウインドオーケストラとオペラ公演をするという提案を最初に聞いたとき、どう思いましたか?
今回は、編曲ものでやるのなら、とことん奇抜なもので、と話を進めるのもありか、と思いました。「トゥーランドット」を指揮するという話は、最初は半信半疑でした。話が進み、運命だと思い、お引き受けしました。
──「トゥーランドット」の作品の魅力は?
プッチーニ本人が生の音を聴いていない、また本人が全てを完成させていないという部分で、疑問点は多いです。特にバランス面でのオーケストレーションに関しては、今回のように弦楽器を抜いて演奏することから何か見つかるかもしれませんね。劇中の謎解きもさながら、演奏者に対しても謎の多いという意味では、魅力的なのかもしれません。
──「トゥーランドット」はリューの自死で未完に終わっていますが、今回の公演は最後をどのように終わらせますか。
後続する音楽は、いわゆるプッチーニ色とは違うもので、無理に背伸びをしているような和声感があるかもしれませんが、声楽的にはトゥーランドットの見せ場・修羅場ですよね。ここまで声質を通せないと、一人前のトゥーランドット歌手としてオペラハウスで雇われることは難しくなるでしょう。通な聴衆はこういうところまで味わう、という意味でも、今回の編曲はこの通常の完結版でお願いしてあります。
──2010年からドイツのマルデブルク劇場の音楽総監督を務めています。約700席の劇場と聞いていますが、どのような特徴を持っていますか。
マグデブルクは、中世の頃、北のローマと言われたほど栄えた町でしたが、数々の戦争などの様々な暗い過去を経て、今のような規模になりました。劇場もワーグナーが初代だった頃からすると、貧相になってしまいましたが、それでも文化を守ろうとする町、国の姿勢は賞賛すべきものだと思います。
現在の支配人、カーレン・ストーンさんは他に類を見ないほど、音楽、オペラを愛し熟知していて、惜しみないサポートをして下さっているので、近くのベルリンやライプツィヒからのお客さんも増えています。そんな所でやらせていただき本当に幸せですし、自分にできる限りの事はしたいと思っています。
Kimbo Ishii
ヴァイオリンを風岡裕に学ぶ。12歳で渡欧、ウィーン市立音楽院にてヴァイオリンをワルター・バリリ、ピアノをゲトルッド・クーバセックに師事。1986年に渡米、ジュリアード音楽院にてドロシー・ディレイ、ヒョー・カンのもとで研鑽を積むが、左手の故障のため指揮に転向。92年より小松長生、マイケル・チャーリー、小澤征爾に師事。95年、ニコライ・マルコ国際指揮者コンクール4位。2006年、ベルリン・コーミッシェ・オーパー首席カペルマイスター。07年、アマリロ響音楽監督。09年、大阪響首席客演指揮者。10年からドイツ・マグデブルク劇場音楽総監督。第9回斎藤秀雄メモリアル基金賞指揮者部門受賞。
東京佼成ウインドオーケストラ
第129回定期演奏会
6月11日(土)14:00 東京芸術劇場コンサートホール
プッチーニ/大橋晃一編曲:「トゥーランドット」抜粋
岡田昌子(トゥーランドット)、 城 宏憲(カラフ)
石上朋美(リュー)、 ジョン・ハオ(ティムール)
井上雅人(役人)、 宮本益光(案内役)
合唱:東京音楽大学
■問い合わせ:電話0120-692-556
■CD
ワーグナー:「恋愛禁制」序曲
ブラームス:交響曲第4番
キンボー・イシイ(指揮)
マグデブルク・フィル
(カメラータ)CMCD-28314