vol.47 指揮・オルガン 鈴木優人
「タメスティと日本の俊英たち」コンサート
前半はバッハ、モーツァルト、後半はシュニトケ
「僕にとっては実験的なコンサートで楽しみです」
「タメスティには私がプロデューサーを務める2013年の調布音楽祭で、バッハの無伴奏チェロ組曲を演奏してもらいました。その前にパリで、父(鈴木雅明)の指揮で、モーツァルトのヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲を演奏した際に知り合いました。彼は日本の寄せ木細工や和菓子など精巧な美が大好きなのです」
「タメスティと日本の俊英たち」と題されたコンサートは、ヴィオラ奏者のタメスティと鈴木を中心に行われる。前半はバッハやモーツァルト、後半はロシアの現代作曲家シュニトケ(1998年没)の作品。シュニトケの曲は「多様式主義」と呼ばれ、中世の音楽から民族音楽、ポピュラー音楽などさまざまな音楽が引用される。今回演奏される「モノローグ」はヴィオラと弦楽のための作品だ。
「タメスティはシュニトケが好きで、『モノローグ』は何度も演奏していますが、日本では初めてだそうです。横浜みなとみらいホールの響きはシュニトケの作品にあっています。『モノローグ』はシュニトケ最晩年の作品で、20分ぐらいです。均一的な音など新しい様式を模索した実験的な印象があります。私はシュニトケの作曲技法が好きなのです。擬古典的あるいは多様式的な手法はダダイズムとまではいかないまでも、どことなくユーモラスで偉ぶっていないところが親しみやすいので、ぜひ聴いていただきたい」
もう一曲のシュニトケ作品は、オルガンとトロンボーンのための「音響と反響」。オルガンを鈴木が、トロンボーンを中川英二郎が演奏する。
父はバッハ・コレギウム・ジャパンの音楽監督、鈴木雅明。鈴木も古楽演奏家の印象があるかもしれないが、東京芸大では作曲科で学んだ。
「尾高惇忠先生に教わりました。当時はセリエリズムや偶然性の曲も書いていました。確かに小学校時代は家ではバッハばかりでしたが、中学校は管弦楽部に入り、今まで知らなかったことに気づきました。当時は『第九』も全然知りませんでした(笑)。バッハは一生演奏していきますが、バッハは僕の中で必要以上に神格化されていません。今回演奏する作品も、バッハの即興的な一面がよく出ています」
前半にはソプラノの小林沙羅も出演し、「フィガロの結婚」よりアリアを歌うなど中身がぎっしり詰まったぜいたくなコンサート。
「シュニトケにすれば、えー、君たちが演奏するの? というかもしれません。僕にとっては実験的なコンサートなのですが、僕たちの冒険がお客さまにどう伝わるのか、楽しみにしています」
Masato Suzuki
1981年、オランダ生まれ。東京芸大卒、同大学院修了。オランダ・ハーグ王立音楽院修了。鍵盤奏者(チェンバロ、オルガン、ピアノ)及び指揮者としてバッハ・コレギウム・ジャパンや横浜シンフォニエッタ(2015年2月まで首席指揮者)などの公演に出演。15年、東京芸術劇場開館25周年記念コンサート「ジョワ・ド・ヴィーヴル─生きる喜び」のアーティスティック・ディレクター。調布音楽祭エグゼクティブ・プロデューサー。舞台演出、作曲家としても活動している。
アントワン・タメスティと日本の俊英たち
12月2日(金)19:30 横浜みなとみらいホール 大ホール
アントワン・タメスティ(ヴィオラ)
鈴木優人(指揮・オルガン)
小林沙羅(ソプラノ)
中川英二郎(トロンボーン)
横浜シンフォニエッタ
バッハ:幻想曲「ピエス・ドルグ」
モーツァルト:「フィガロの結婚」より、他
モーツァルト:交響曲第35番「ハフナー」
シュニトケ:「音響と反響」
シュニトケ:「モノローグ」
■問い合わせ:横浜みなとみらいホール 電話 045-682-2020 19:00~19:15プレコンサート