vol.51 ピアノ・デュオ 児玉麻里&桃
姉妹初共演CDはチャイコフスキーの3大バレエ
「理想は2台が1台のように聴こえること」と麻里
「ラフマニノフの大きな手も想像できます」と桃
姉妹初共演のCDをリリースした。チャイコフスキーの3大バレエをピアノ・デュオで録音している。「眠りの森の美女」はラフマニノフ、「くるみ割り人形」はアレンスキー、「白鳥の湖」はランゲリ、そしてドビュッシーという大物作曲家が編曲している。連弾用の曲だが、録音は2台ピアノで行った。
「アレンスキーの『くるみ割り人形』は世界初録音です。楽譜が出版されていませんでした。2人でどういうアイデアで演奏するか打ち合わせしました。『くるみ割り人形』は桃が上のパートで、残りは私が上でした。理想としては2台のピアノの音が混ざり合い1台のように聴こえることです」と姉の麻里。
「2台ピアノの方が可能性が広がります。ペダルのこともあり、いろいろな色彩感が出せます。『眠りの森の美女』はロシアの広い大地だけでなく、ラフマニノフの大きな手も想像できます。ドビュッシーの『白鳥の湖』はフランスのエレガントさが出ています。ドビュッシーはチャイコフスキーを尊敬していました。自分の個性を出そうと思って書いたのではなく、個性が強い作曲家ですので出てしまったのでしょう」と桃は話す。
「白鳥の湖」は、まだパリ音楽院の学生だったドビュッシーが、チャイコフスキーのパトロンだったメック夫人に「お抱え音楽家」として雇われ、連弾用に編曲するよう依頼されてできた作品。
「全ての作品が異なり、おもしろかった。チャレンジという意味では『くるみ割り人形』でしょうか。ラフマニノフもドビュッシーもこの連弾曲が処女作なのです」と麻里。
2人はこれまでも年に3、4回、連弾のコンサートを行っている。姉妹ゆえのメリットがあるという。
「2人の弾き方はまったく違います。打ち合わせでタイミングなど違う弾き方をしても、本番では合わせることができます。これは姉妹で感じるものがあるからです。以心伝心は練習を重ねても得られません。2台ピアノで向かい合っても相手は見えません。以心伝心で作り上げないとぴたりといきません」と麻里はいう。
桃は「練習はよくします。お互いに意見を交換して実験をすることもあります。舞台で、お客さまのエネルギーを感じてタイミングを変えたりしても瞬間的に分かります。人前で弾くときにはそれだけの準備が必要です。確信を持って舞台に出ないといけません」と話していた。
Mari Kodama
6歳で渡欧。14歳の時、最年少、最優秀でパリ国立高等音楽院に入学。ムニエ、ニコライエワ、ブレンデルに学ぶ。17歳でプルミエ・プリで卒業。セニガリア国際コンクール、ブゾーニ国際コンクールなどで優勝、上位入賞。パリ在住。
Momo Kodama
1歳で渡欧し、13歳の時、幼い頃からムニエに師事。最年少、最優秀でパリ国立高等音楽院に入学。ニコライエワ、シフ、ペライア、ゴルノスタエワに学ぶ。1991年、ミュンヘン国際コンクールに19歳で最高位に輝く。
■CD
チャイコフスキー・ファンタジー(写真)
「眠りの森の美女」組曲(ラフマニノフ編)
「くるみ割り人形」より(アレンスキー編)
「白鳥の湖」(ランゲリ編)/(ドビュッシー編)
(キングインターナショナル)KKC-5666(SACDハイブリッド)
ベートーヴェン:ピアノソナタ全集
児玉麻里(ピアノ)
(キングインターナショナル)KKC-5480(SACDハイブリッド)
■コンサート
次代へ伝えたい名曲第9回
3月11日(土) 14:00 彩の国さいたま芸術劇場音楽ホール
竹澤恭子(ヴァイオリン)、児玉桃(ピアノ)
プーランク:ヴァイオリ・ソナタ、他
■問い合わせ:電話0570-064-939